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3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

毎日新聞の特集記事

毎日新聞が
クローズアップ2008:再犯知的障害者の更生 司法・福祉、連携で支援という特集記事を載せている。

メジャーなテーマとは言い難い内容だが、刑事弁護に携わるものとしては必見。

なお、同記事で触れられている
 03年に出版された山本譲司・元衆院議員の「獄窓記」(ポプラ社)
も必読である。
# by lodaichi | 2008-05-06 20:03
 今年中には、被害者参加制度が始まり、来年5月からは裁判員制度が施行される。
 これまで弁論要旨は裁判官にわかればよかったが、これからは、被害者にも裁判員にもわかるような表現にあらためなければならない。

 一例をあげる。

 弁論要旨の冒頭では
 「本件について,被告人は公訴事実を認めており,弁護人もこれを争うものではない。しかし,被告人には以下のとおり酌むべき事情があるのであり,執行猶予付き判決とするのが妥当である。」
というような表現を使うが、法律には素人の方と議論をしたが、この表現自体、「むつかしくてわかりにくい」というのことだ。

 「被告人」とか「公訴事実」とか「執行猶予付き判決」というような法律上の用語もわかりにくい原因だが、それは今回はおいて、表現を改めてみることとする。

 「被告人は公訴事実を認めています。
 弁護人としても公訴事実は争いませんが、次のような事情もありますので、執行猶予のついた判決を求めます。」


どうだろうか。
これだけでも一般の方には随分違うらしい。
「以下のとおり」とか「酌むべき事情」というのは、法律家には当たり前かもしれないが、一般的な用語ではない。
特に、「酌むべき」は、何と読んだらいいかわからないようだったし、「くむべき」と聞いても何のことだかピンとこないという。
まだ、「情状酌量」という言葉の方がテレビで聞くからわかるという声をあった。

では、「酌むべき事情」に変えて、「有利な事情」とするのはどうだろうかと疑問をぶつけてみた。
しかし、”「有利な」という言葉は、被害者から見てとても気にかかる。有利とか不利とか、そんな言葉ではないのではないか”というような意見があった。
なるほど、なかなか難しいものだ。

あと、短文で書くこと。
複文は、わかりにくさを倍増させるようだ。

 
# by lodaichi | 2008-05-06 10:16
 広島における接見禁止準抗告運動が成果をあげていることについて、日弁連からきた新聞に書かれていました。

 この運動は、接見禁止決定に対して、弁護人側から準抗告をする運動で、今枝弁護士が準抗告申立書の書式を作成し、弁護人に負担がかからないように準抗告ができる体制を整えたものです。

 この運動は成果を上げ、接見禁止決定自体が減少したということです。
 このように弁護人の取り組みで実務を変えることができるということを示したことは大きな意味をもつと思います

 後に述べるブログで今枝弁護士は、
接見等禁止決定に対し,こと細かく(準)抗告申立をなしていくことは,接見等禁止から当該被疑者を解放することに加え,そもそも接見等禁止がなされることへの事前の抑止効果となることが期待される上,準抗告審決定書の中での理由が捜査状況や証拠関係等の可視化に資するなど,その効果は極めて大きい。
と述べておりますが、同感です。

 ところで、私は日弁連の新聞の記事を読んで、今枝弁護士が作成したという書式を入手したく思いましたので、広島弁護士会に電話したところ、快くファクスしてくださいました。
 拝見しましたが、色々な事案に対応できるように書かれており、非常に参考になります。
 
 なお、接見禁止準抗告運動については、今枝弁護士自身がご自分のブログで記事を書いていますので、ご参照ください→こちら
# by lodaichi | 2008-05-02 07:45
「罪と罰」を読んでいたら、救護義務違反の条文がいつのまにか増えていたことを知った。
救護義務違反は、実務でもよくでてくる犯罪であり要注意だ。

平成19年道交法改正(同年9月19日施行)で、酒気帯び運転の法定刑が引上げられたが、救護義務違反の厳罰化もあわせてなされていた。

従来の規定は
「車両等(軽車両を除く。以下この条において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があった場合において、第72条(交通事故の場合の措置)第1項前段の規定に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
と規定されていた。

ややこしいことに、この条文は温存され、次のように2項が追加された
「前項の場合(救護義務違反)において、人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」

つまり
運転起因性あり→117条2項
運転起因性なし→117条1項
ということになった。

となると、問題は「起因する」の意味である。
この点、平尾覚法務省刑事局付検事の見解をそのまま引用しておく
条文上は「起因する」としか書いてないから、一つの解釈論であるが、今後弁護人として解釈論を展開するときの一つの参考にはなろう。

「起因する」と言えるためには、問題となる運転行為が、人の死傷について因果の起点となったと言えることが必要であると解される。人の死傷について因果の起点となるためには、当該人の死傷の結果が、運転者の運転行為に内在する危険性が現実化したものであると認められる必要があるであろう。当該人の死傷が運転者の運転の危険性が現実化したものと認められるのではなく、別の要因、例えば、当該死傷を負った被害者の行為の危険性が現実化したものであり、運転者の運転行為の危険性が現実化したものではないと言わざるを得ない場合には、当該人の死傷は運転に「起因する」とはいえない。
言い方を変えるならば、「起因する」と言えるためには、単に人の死傷との間で条件関係が存在すれば足りるのではなく、社会通念により判断しても、当該人の死傷が運転を原因として発生したと言い得る必要がある。

# by lodaichi | 2008-04-30 08:18
 いわゆる2号後段書面の証拠の採否が問題となったケースがあった。

 このケースは、参考人が捜査段階での検面調書での被告人に不利な供述をひっくり返して、公判で証人として呼ばれた際には、被告人に有利な供述をしたというものであった。
 
 検察官は、刑訴法321条1項2号2号後段書面として、証拠請求。
 弁護人としては、当然これに反対することとなる。

 弁護人としては、裁判所が証拠請求した場合に備えて、証拠採用決定に対して異議申立をしておかなければならない。

 この異議のポイントであるが、
1 異議の申立は直ちにしなければならない(刑訴規則205条の2)
2 法令違反であることを指摘しなければならない(規則205条1項)
ということである。

 と、ここまではほぼどの本にも書いてあるが、では、どのように異議を実際に出したらよいのかということについては、残念ながらずばり書いてある本は少ない。

 司法研修所が出している「刑事弁護実務」(いわゆる白表紙)や青林書院「刑事弁護の手続きと技法」にも書いていない。

 私が参照できたもので、この点を書いているのは、日本評論社「刑事弁護」だけであった(ほかにもいい本があれば教えてほしい)。

 同書によれば、
証拠決定が出たら、その場で、
「異議あり。裁判所の決定は*条*項に違反する」
といわなければならないとされており、伝聞証拠の場合は、違法の理由として、
「伝聞法則である刑訴法320条1項の規定に違反する」
といえばよいとされている。

 有益な書式が多い、ミランダの会のホームページも参照したが、2号書面の異議申立の書式はないようである。
 書式集にあったのは、
 検察側証人採用決定に対する異議申立
 弁護側鑑定請求却下に対する異議申立
であった。
 前者では、
「検察官は、弁護人からの度重なる要求ににもかかわらず、右両名の供述を一切弁護人に開示しないまま、本証人申請に及んだものである。この状態で証人尋問を実施することは、被告人の防御の権利(日本国憲法三七条二項、市民的及び政治的権利に関する国際規約一四条三項(b))を著しく侵害するものである。(以下略)」
と法令を掲げてあったが(→こちら)、後者については、法令を掲げておらず(→こちら)、残念ながら参考にならない。




 
# by lodaichi | 2008-04-27 15:25