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3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

必要的弁護事件

必要的弁護事件については、刑事訴訟法289条が規定しているところである(本記事末尾に条文を引用)。

条文をみていただければわかるが、2項、3項は結構極限的な場合で、実務でそうそう例があるというものではない。

289条1項は、
死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
と規定しているが、
では、長期3年以下の懲役若しくは禁錮にあたる事件又は罰金しかないような事件を審理する場合はどうなのか?
という疑問をもったことがあるだろうか。

 例えば、死体遺棄事件のみで公判請求されるケース(死体遺棄は、3年以下の懲役である)
 無免許運転罪のみで公判請求されるケース(1年以下の懲役又は30万円以下の罰金)
 などがそれにあたる。
 
 こういう事件でも、実務では(国選)弁護人がつくのが普通である(私選弁護人は当然どの事件でもつけられる)。

 いや、もしかすると日本ではこのようなケースでもつけない場所があるのかもしれないが、少なくとも千葉の本庁の実情を見る限り、必要的弁護事件でなくても、被告人の請求がなくても、職権で国選弁護人を選任していると思われる。

 これは、条文上は、刑訴法37条5号によるものであるが、その実質的な理由は、裁判官の負担軽減であろうと思われる。

 私が修習生だったころ(もう15年も前の事である)は、酒気帯び運転だったか、無免許運転だったか忘れたが、道路交通法違反で公判請求されたケースで弁護人がついていなかった後半を傍聴した事があるが、裁判官が、被告人に証拠を同意するか不同意にするかだけで、だいぶ説明を要しており、これなら弁護人を選任した方がよいのではないかと思った覚えがある。
 
 弁護人がいたほうが被告人のためにも良いし、現在の運用は是とされるべきだろう。

 ただ、弁護過疎地域では、このような運用がなされず、必要的弁護事件でない事件では、289条を字義どおり反対解釈しての運用(?)がなされているところもあるかもしれないので、そのようなケースがあったら、教えていただきたいと思う次第である。


第289条 死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
2 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなつたとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。
3 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

第37条 左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。
1.被告人が未成年者であるとき。
2.被告人が年齢70年以上の者であるとき。
3.被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。
4.被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。
5.その他必要と認めるとき。
by lodaichi | 2009-03-24 06:57