サンダーバード強姦事件と刑事弁護人の使命
2008年 01月 24日
高次脳機能障害ではないかという疑いがあったケースだ(下記記事を参照のこと)。
「高次脳機能障害」を知らない刑事弁護士は多いかもしれない。
交通事故事件でも、特殊といわれるような知識だ。
しかし、知っておいて損はない、というか知っておかなければならない。
高次脳機能障害に限らず、精神科的な知識は必須であり、折に触れて勉強すべきだ。
ところで、この事件はとんでもない事件だ
「被害者の恐怖感、甚大」。まさにそのとおりだろう。
それは、刑事弁護人でも同じように感じるだろう。
しかし、そう弁護士個人が考えたとしても、刑事弁護人の役割はひとつ。
被告人の弁護である。
そのためには、全知識をつかって、主張立証をしていかなければならない。
本件の弁護人は、高次脳機能障害を主張した。
弁護人として非常にすぐれた主張だと思う。
情状鑑定を実施させたところも弁護活動としては評価できる。
一審判決ではその主張は認められてはいないが、求刑25年からかなり言い渡し刑が下がっているところをみると、弁護人の主張は一定の成果があるとみるべきではないか。
以下、読売新聞より引用(ただし、被告人名は伏せた)
「被害者の恐怖感、甚大」…特急内暴行男に懲役18年
JRの特急電車内などで女性を暴行したとして、強姦(ごうかん)罪などに問われたU被告(36)の判決公判が17日、大津地裁であり、大崎良信裁判長は「規範意識が低く、自己抑制力の乏しさは深刻。公共交通機関の中で強姦された被害者の精神的打撃、恐怖感は甚大だ」として、懲役18年(求刑・懲役25年)を言い渡した。
判決によると、U被告は2006年8月3日夜、JR北陸線の特急車内で、20歳代女性に「大声を出すな。殺すぞ」などと脅し、車内のトイレに連れ込んで乱暴。同年12月21日夜には、JR湖西線の普通電車内と雄琴駅のトイレで女性2人を暴行した。
この事件を機にJR西日本は、車掌らの車内巡回を強化。非常通報ボタンを周知するため、大型のステッカーを在来線の全約5300車両に張ったり、駅構内に防犯カメラを増設したりする再発防止策を講じた。
公判で、検察側は「多数の乗客らがいる中で自らの欲望を満たすために犯行に及んでおり、極めて悪質。市民が安心して公共交通機関を利用できるよう厳罰で臨むことが不可欠」と主張していた。
これに対し、弁護側は「16歳の時に起こした交通事故の後遺症で衝動が抑えにくく、犯行に影響した」などとして情状鑑定を請求。しかし、植園被告は過去に覚せい剤を使用しており、鑑定医は「薬物(覚せい剤)や性格による影響が大きい」とする鑑定結果を出し、地裁が証拠採用していた。
(2008年1月17日 読売新聞)