3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

弁護人選任届と刑事訴訟規則17条、18条

弁護士として提出する書面は、刑事事件でも記名押印で足りるのであるが、弁護人選任届だけは例外である。

弁護士も署名押印をすることと、教わるだろうし、記名押印をしたら、被疑者段階なら、検察官から、「先生、この弁護人選任届、先生の署名がありませんけど」といわれるのがおちであろう。

さて、これはなぜであろうか。

刑事訴訟法をいくら見ても解決はつかない。
刑事訴訟法には、選任の方式について何ら規定していないからだ。

答えは、刑事訴訟規則にある。

刑事訴訟規則17条は、弁護人選任届けについては、重要な条文であるから、参照できるようにしっかり記憶しておいてほしい。

(被疑者の弁護人の選任・法第三十条)
第十七条 公訴の提起前にした弁護人の選任は、弁護人と連署した書面を当該被疑事件を取り扱う検察官又は司法警察員に差し出した場合に限り、第一審においてもその効力を有する。

 さきほどの答えを言うならば、刑事訴訟規則17条に「連署」する旨規定しているからだ
ということになる。

 しかし、これだけで終わりにしてしまうのは、刑事訴訟規則17条を十分に知る上では、ちと惜しい。

 この17条、実は不思議な条文の書き方をしているのである。

 それは、同規則18条と比較してみればわかる。

(被告人の弁護人の選任の方式・法第三十条)
第十八条 公訴の提起後における弁護人の選任は、弁護人と連署した書面を差し出してこれをしなければならない。

つまり、被告人の弁護人の選任の方式としては、「弁護人と連署した書面を差し出してこれをしなければならない」としており、連署したものでなければ、弁護人選任の効力が生じないものとされているのに、被疑者段階の場合は、「第一審においてもその効力を有する」という限度でしか規定されていないのである。

そこで、「第一審においてもその効力を有する」ということが解釈上の問題として浮上してくる。

17条を反対解釈すれば、
 連署しなくても、第一審の前(即ち被疑者段階)では、効力を生じる
となりそうである。
 
 しかし、検察実務ではそのような解釈はとらないようであり、署名が無いと、検察官から、「先生、この弁護人選任届、先生の署名がありませんけど」といわれるのがおちである。

 このようなところで争っても仕方ないので、検察官からの”指導”に従うことにしているが、ひとつの問題点であろう。
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by lodaichi | 2010-01-01 08:33