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3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi
12月になってさすがに忙しい。

ところで、この業界は12月28日が御用納めである。

起訴前の勾留はマックスで20日だから、28日までに捜査側が終わりにしようとすれば、その前まで勾留しておかなければならない。

28日を最終勾留日とし、20日勾留でくためには、9日までには勾留をしないといけない。

そのため、先週から今週にかけて勾留事務などは結構忙しいのではないかと思う。

この事件が昨日逮捕されたのも、上記のような理由があるかもしれない
http://www.excite.co.jp/News/entertainment/20091208/Sponichi_kfuln20091208006001.html

今後、年末年始にかけては、緊急を要する事案や現行犯事案のみが勾留されていくことになるであろう。
# by lodaichi | 2009-12-08 11:29

刑事弁護ビギナーズ

刑事弁護Beginners 実務で求められる技術と情熱を凝縮した刑事弁護の入門書
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32008132

うちの事務所の若手はみな持っているこの本。
今は新人弁護士にはこれが人気らしい

最近知った事だが、このブログもこの本で紹介されているそうな

どうりで、こんなマニアックなサイトに結構アクセスがあると思った(といっても、平日で50~90アクセスくらいだが)。

私が弁護士になったころ(1995年)は、このような親切な本はほとんどなかった

あったのは、
「刑事弁護」という日本評論者から出ている本
最近新版がでた
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32324592

裁判員の影響もあるのか本はたくさん出ているが、事件をこなしていくには、本にある知識だけではだめで、
 事件の筋読みの仕方とか
 刑事弁護に対するスピリットとか
 具体的な尋問でどう切り込んでいくのかとか
は記録を読み込んで、議論していくしかない。

 ひとりで考えているだけでは、やっぱり成長しないもので、いろいろな議論の中で見えてくるものがある。

 本の使用に当たっては、そういうことは是非念頭においてほしいものである。
 
# by lodaichi | 2009-12-02 06:57
国家権力と零細企業の差

 千葉地裁での裁判員裁判後の裁判員の発言

 裁判員経験者の女性は、検察側と弁護側の立証について「検察側はカラーで図のある書類、要点がまとまっていた。弁護側はワープロ打ち1枚。国家権力と零細企業の差のような印象」と語った。http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091127/trl0911272101010-n1.htm

いや、まさにそのまんまなんですけどね
 検察=国家権力
 弁護士=零細企業
ですから。

もっとも、一般の方は、弁護士は、検察と対等という意識があり、それなのに、検察とこんなに差があるのかという気持ちがあるから、このような発言になるのではないかと思います。

それにしても、この感想に沿ったような判決だったのが、気になります。

検察=懲役8年求刑
弁護人=懲役4年程度
判決=懲役7年6月

 やはり、この辺のプレゼンの仕方は、弁護士個人がやるのは限界があり、事務所とかもっと大きなところで取り組む必要があるのかなと考えざるを得ない発言です。

 ただ、裁判員の発言はプレゼンの仕方に言及していますが、結局は、弁護士の争う姿勢の力量にあった可能性もありますが・・・・


と、ここまで書いて、他の記事を見てみたらさらに弁護人に厳しい指摘が・・・

毎日新聞
http://mainichi.jp/area/chiba/news/20091128ddlk12040166000c.html

判決後に記者会見した裁判員からは「検察側の書類は図解で要点をまとめるなど分かりやすく気合を感じた。一方で、弁護側の書類は文章のみ。心証面で検察側に傾くきらいがある。国家権力と零細企業の差では」「国選弁護人は費用、時間に限りがあるのでは」との声が上がった。

 やはり、「わかりやすさ」「気合」ですか。

 この「気合」、私は、”立証にかける意気込み”の意味に解すべきだと思いますね。

 「わかりやすさ」の点ではどうしようもないですね。

 国選弁護人であることではなく、これは弁護士の能力の問題でしょう。
# by lodaichi | 2009-11-28 21:04
以前、
弁護人の心構え
と題し、
 弁護人が、公訴事実の有無を認定できるか否か検討するについては、自分が起訴検事になったつもりで考えるべきだ。
ということを述べたが、少し具体的に述べてみる。

例えば、酒気帯び運転の公訴事実はこんな風に書かれている。

「被告人は,酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で,平成*年8月31日午前1時32分ころ,千葉県*市a町b番地付近道路において,普通貨物自動車を運転したものである。」

 弁護人は、被告人が「公訴事実は争いません」と接見で聞いただけで、安心してしまい、争うことを忘れてしまうなんてことは絶対にしてはならない。

 いろいろなアプローチの仕方はあると思うが、公訴事実に述べられた順に考えていくのもひとつの方法である。

 まず、「呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態」というが、これはどの証拠から認められるのか?
という疑問を発する。
 普通は、酒気帯び鑑識カード及び検知の結果だろう。
 でも、実は、酒気帯び検知をしたオリジナルの証拠は請求されていないことが多い(少なくとも、千葉の現状では;私が弁護士なりたての頃は検知のオリジナル証拠=検知管が証拠請求されていた)。
 それを見なくて、警察・検察を信じてしまっていいのか?

 証拠上、0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態であったとしても、その証拠収集方法に問題は無かったのか?
 例えば、口をゆすがせていたのか(証拠上は、口をゆすがせたと書いてあったとしても、本当にゆすがせたのか、わからない)

次に、日時
先ほどの公訴事実だと、「平成*年8月31日午前1時32分ころ,千葉県*市a町b番地付近道路において」となっているが、これは正しいのか?
警察が検問をやっていて、ひっかかったケースであれば、この辺は問題ない。
ところが、物損をやって、あとで警察を呼ばれて検挙されたというようなケースでは、警察官が日時場所を明確に認識しているわけではないので、どうやってそれらを特定したのかという問題が生じる。
公訴事実に書かれた日時はいつの時点のものなのか、場所はどこをどうやって特定したのか、こういうことを考えていくと、意外と証拠があいまいだったり、逆にしっかり証拠のどこかに書いてあるのを探し出す事ができるものだ。

つまりは、捜査を追体験するということだ。
捜査を追体験し、それにチェックを入れる。
これが弁護人の役割である。
# by lodaichi | 2009-11-24 08:15
ギャンブル依存とたたかう

刑事弁護をしていると、競馬にはまって、消費者金融からお金を借りてそのお金を返せないために強盗に及んだだとか、パチスロにはまって、やはりお金がなくなっただとか、そういう事例にあたる。

そういうケースは、被告人が無職だったりすると、検察官は、
「被告人は無為徒食の生活をしていたものであるが」
などといっていたものだが、競馬なり、パチスロなり、いずれもギャンブルであり、それにはまってしまった人は、ギャンブル依存症である可能性が大である。

よって、ギャンブル依存の検討が必要である。

そのためには、有益な一冊

著者
帚木 蓬生(ハハキギ ホウセイ)
は、精神科医

以下、目次をかかげておく。

プロローグ ある主婦の「転落」
第1章 ギャンブル依存症とは何か
第2章 ギャンブル依存者の身体的変化と遺伝・性格
第3章 ギャンブル依存者はどのくらいいるか
第4章 ギャンブル依存症に合併する病気
第5章 ギャンブル依存者と周囲の人たち
第6章 ギャンブル依存と法的問題
第7章 ギャンブル依存症の治療
第8章 ギャンブルとこれからの社会
エピローグ 「再生」
# by lodaichi | 2009-11-19 10:09