3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

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国家権力と零細企業の差

 千葉地裁での裁判員裁判後の裁判員の発言

 裁判員経験者の女性は、検察側と弁護側の立証について「検察側はカラーで図のある書類、要点がまとまっていた。弁護側はワープロ打ち1枚。国家権力と零細企業の差のような印象」と語った。http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/091127/trl0911272101010-n1.htm

いや、まさにそのまんまなんですけどね
 検察=国家権力
 弁護士=零細企業
ですから。

もっとも、一般の方は、弁護士は、検察と対等という意識があり、それなのに、検察とこんなに差があるのかという気持ちがあるから、このような発言になるのではないかと思います。

それにしても、この感想に沿ったような判決だったのが、気になります。

検察=懲役8年求刑
弁護人=懲役4年程度
判決=懲役7年6月

 やはり、この辺のプレゼンの仕方は、弁護士個人がやるのは限界があり、事務所とかもっと大きなところで取り組む必要があるのかなと考えざるを得ない発言です。

 ただ、裁判員の発言はプレゼンの仕方に言及していますが、結局は、弁護士の争う姿勢の力量にあった可能性もありますが・・・・


と、ここまで書いて、他の記事を見てみたらさらに弁護人に厳しい指摘が・・・

毎日新聞
http://mainichi.jp/area/chiba/news/20091128ddlk12040166000c.html

判決後に記者会見した裁判員からは「検察側の書類は図解で要点をまとめるなど分かりやすく気合を感じた。一方で、弁護側の書類は文章のみ。心証面で検察側に傾くきらいがある。国家権力と零細企業の差では」「国選弁護人は費用、時間に限りがあるのでは」との声が上がった。

 やはり、「わかりやすさ」「気合」ですか。

 この「気合」、私は、”立証にかける意気込み”の意味に解すべきだと思いますね。

 「わかりやすさ」の点ではどうしようもないですね。

 国選弁護人であることではなく、これは弁護士の能力の問題でしょう。
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by lodaichi | 2009-11-28 21:04
以前、
弁護人の心構え
と題し、
 弁護人が、公訴事実の有無を認定できるか否か検討するについては、自分が起訴検事になったつもりで考えるべきだ。
ということを述べたが、少し具体的に述べてみる。

例えば、酒気帯び運転の公訴事実はこんな風に書かれている。

「被告人は,酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で,平成*年8月31日午前1時32分ころ,千葉県*市a町b番地付近道路において,普通貨物自動車を運転したものである。」

 弁護人は、被告人が「公訴事実は争いません」と接見で聞いただけで、安心してしまい、争うことを忘れてしまうなんてことは絶対にしてはならない。

 いろいろなアプローチの仕方はあると思うが、公訴事実に述べられた順に考えていくのもひとつの方法である。

 まず、「呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態」というが、これはどの証拠から認められるのか?
という疑問を発する。
 普通は、酒気帯び鑑識カード及び検知の結果だろう。
 でも、実は、酒気帯び検知をしたオリジナルの証拠は請求されていないことが多い(少なくとも、千葉の現状では;私が弁護士なりたての頃は検知のオリジナル証拠=検知管が証拠請求されていた)。
 それを見なくて、警察・検察を信じてしまっていいのか?

 証拠上、0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態であったとしても、その証拠収集方法に問題は無かったのか?
 例えば、口をゆすがせていたのか(証拠上は、口をゆすがせたと書いてあったとしても、本当にゆすがせたのか、わからない)

次に、日時
先ほどの公訴事実だと、「平成*年8月31日午前1時32分ころ,千葉県*市a町b番地付近道路において」となっているが、これは正しいのか?
警察が検問をやっていて、ひっかかったケースであれば、この辺は問題ない。
ところが、物損をやって、あとで警察を呼ばれて検挙されたというようなケースでは、警察官が日時場所を明確に認識しているわけではないので、どうやってそれらを特定したのかという問題が生じる。
公訴事実に書かれた日時はいつの時点のものなのか、場所はどこをどうやって特定したのか、こういうことを考えていくと、意外と証拠があいまいだったり、逆にしっかり証拠のどこかに書いてあるのを探し出す事ができるものだ。

つまりは、捜査を追体験するということだ。
捜査を追体験し、それにチェックを入れる。
これが弁護人の役割である。
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by lodaichi | 2009-11-24 08:15
ギャンブル依存とたたかう

刑事弁護をしていると、競馬にはまって、消費者金融からお金を借りてそのお金を返せないために強盗に及んだだとか、パチスロにはまって、やはりお金がなくなっただとか、そういう事例にあたる。

そういうケースは、被告人が無職だったりすると、検察官は、
「被告人は無為徒食の生活をしていたものであるが」
などといっていたものだが、競馬なり、パチスロなり、いずれもギャンブルであり、それにはまってしまった人は、ギャンブル依存症である可能性が大である。

よって、ギャンブル依存の検討が必要である。

そのためには、有益な一冊

著者
帚木 蓬生(ハハキギ ホウセイ)
は、精神科医

以下、目次をかかげておく。

プロローグ ある主婦の「転落」
第1章 ギャンブル依存症とは何か
第2章 ギャンブル依存者の身体的変化と遺伝・性格
第3章 ギャンブル依存者はどのくらいいるか
第4章 ギャンブル依存症に合併する病気
第5章 ギャンブル依存者と周囲の人たち
第6章 ギャンブル依存と法的問題
第7章 ギャンブル依存症の治療
第8章 ギャンブルとこれからの社会
エピローグ 「再生」
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by lodaichi | 2009-11-19 10:09
事務所の弁護士も被疑者国選が多くなってきているので、例えば、こんなケースも出てきた。

千葉県内でまず逮捕・勾留(例えば、強盗事件;千葉県の弁護士が被疑者国選でつくこととなる)。
その後、別の県(例えば、埼玉県でやった窃盗事件としよう)での事件が発覚した場合、どうなるか?

この場合、千葉県内での強盗事件で、千葉地裁に起訴される。

その後、埼玉県警が窃盗事件で逮捕するとその事件は、さいたま地検に送致される。
勾留されて、要件を満たせば、被疑者国選がつく。
この場合、埼玉県の弁護士が国選弁護人となる。
そして、
嫌疑が固まればさいたま地裁に起訴される。

整理すると、
 千葉地裁→強盗事件(千葉の弁護士が国選弁護人)
 さいたま地裁→窃盗事件(さいたまの弁護士が国選弁護人)
が係属することとなる。

 併合した方が被告人の利益になるので、通常は、どちらかに併合する。
 
 どのように併合されるかはケースバイケースだと思うが、
私の理解では、
 重い事件がある場合は、重い事件のある方
 否認事件場ある場合は、否認事件のある方
である。
 
 上記のケースでは、強盗と窃盗が双方自白であれば、強盗事件のある千葉地裁の方に併合されるのが普通であると思う。
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by lodaichi | 2009-11-16 17:40

鑑定人尋問

 責任能力を争っている弁護士から、鑑定人尋問について聞かれた。
 
 手近な実務刑事弁護本を見てみたが、あまり書いていない。

 医師サイドの目から見た鑑定人尋問について書かれたサイトがあったので紹介する。

http://www.kms.ac.jp/~hsc/kugoh/kantei/kantei_4.htm

なお、
 鑑定人尋問

 鑑定人に対する証人尋問
は違う概念だしやることも全然違うので、注意のこと。
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by lodaichi | 2009-11-12 10:54
 A事件とB事件が併合罪の関係にたつとして、先にA事件が起訴されて、執行猶予判決が確定した場合、B事件がその後起訴されたとき、B事件について執行猶予判決を得ることが出来るか。
 その根拠はどうなるのか。
 B事件が実刑判決となった場合、A事件の執行猶予付き判決はどうなるのか。

 現在、押尾事件をめぐって、このような問題点が生じている。

 実務でもときどき見かける問題点である。

 落合弁護士のブログに整理されているので、そちらを参照のこと
こちら

 そこでも引用されている
 最判昭和32・2・6刑集11・2・503
が重要だから、記憶しておいてほしい。
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by lodaichi | 2009-11-08 07:03