3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

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事務所に新たに入所した弁護士と色々と話をする。

どこまで仕事に必要な概念を理解しているか試すためである。

人の興味関心というのは、それぞれで、「弁護士」であるといっても、すべて知っているというわけにはいかない。

だから、いろいろと話をして、理解の程度を試す必要があるのだ。

ところで、今回はなしをしたのは、国選付添人制度(少年事件)についてだった。

改めて調べてみたら、私の理解も不正確だったので、ここで整理して書いておく。

まず、国選付添人選任の要件に関する条文は次のとおり。

(国選付添人)
第22条の3 家庭裁判所は、前条第1項の決定をした場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である付添人を付さなければならない。

2 家庭裁判所は、第3条第1項第1号に掲げる少年に係る事件であつて前条第1項各号に掲げる罪のもの又は第3条第1項第2号に掲げる少年に係る事件であつて前条第1項各号に掲げる罪に係る刑罰法令に触れるものについて、第17条第1項第2号の措置がとられており、かつ、少年に弁護士である付添人がない場合において、事案の内容、保護者の有無その他の事情を考慮し、審判の手続に弁護士である付添人が関与する必要があると認めるときは、弁護士である付添人を付することができる。


付添い人の選任について、1項は必要的、2項は任意的に記載されている。

で、必要的なものは、
 検察官関与決定(22条の2)がなされた場合(22条の3第1項)
に限られる。

任意的なものとしても  
1.故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪
2.前号に掲げるもののほか、死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪
のいずれかの犯罪の事件であることが要件となっている。

そうすると、国選付添い人がつくケースというのは非常に限られるのだ。

これらの事件は、裁判員対象事件よりも狭いのだから。

以下の日弁連の指摘は、このことを踏まえると容易に理解できるであろう。

2009年5月21日から、捜査段階の被疑者国選弁護制度の対象事件が拡大されますが、家庭裁判所送致後の国選付添人制度の対象事件は重大事件に限定されたまま拡大されません。このため、捜査段階で国選弁護人がついても、家裁送致後には多くの少年には国選付添人がつかないまま、「おきざり」になってしまいます。しかし、弁護士は、少年審判が適正に行われるように弁護したり、非行を犯した少年の立ち直りを援助する活動を行うなど、重要な役割を担っています。

是非とも国選付添人制度の対象事件を拡大することが必要です。

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by lodaichi | 2009-10-23 07:21
千葉県弁護士会では、全国的に例をみないと思われるが、当番弁護士制度を廃止してしまって、私選弁護人紹介制度のみを運用している(→過去記事)。

私選弁護人紹介制度
 この制度は、あなたやあなたのご家族が刑事事件の被疑者・被告人となり私選弁護人の選任を希望する場合、弁護士会が弁護人を紹介するというものです。実際に弁護人として選任するか否かは、紹介された弁護士(弁護人候補者)と話し合った上で決めることになります。

これは、千葉県弁護士会のHPに書かれているものであり、制度そのものの説明としては正しいのであるが、実際にこの制度で被疑者と接見する場合は、被疑者国選との関係を意識しておく必要がある。

 資力基準(50万円)を超える資産を有する被疑者は、直ちには被疑者国選の請求ができず、私選弁護人紹介の申し出をしなければならない(刑訴法36条の3第1項)。

 紹介を受けた弁護士は、受任を拒むことができるが(31条の2第2項参照)、拒んだ場合、弁護士会は速やかに裁判所にその旨を通知しなければならない(同第2項)。

 つまり、私選弁護人の受任拒絶により、被疑者は国選弁護人をつけてもらえることになるのである。

 この点について、わかっていない弁護士がいるようだが、これは明らかに弁護士の力量不足であり、被疑者に手続を適切に説明していないものとして、懲戒ものである

 被疑者国選が制度としてあるにもかかわらず、被疑者の請求によることから、被疑者国選がついていないケースも散見されるが、上記のような弁護側の誤解により、被疑者の権利行使を妨げてはならない。

参考条文
第三十六条の三 この法律により弁護人を要する場合を除いて、その資力が基準額(標準的な必要生計費を勘案して一般に弁護人の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)以上である被告人が第三十六条の請求をするには、あらかじめ、その請求をする裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。
2 前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所又は当該被告事件が係属する裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。

第三十一条の二 弁護人を選任しようとする被告人又は被疑者は、弁護士会に対し、弁護人の選任の申出をすることができる。
2 弁護士会は、前項の申出を受けた場合は、速やかに、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければならない。
3 弁護士会は、前項の弁護人となろうとする者がないときは、当該申出をした者に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。同項の規定により紹介した弁護士が被告人又は被疑者がした弁護人の選任の申込みを拒んだときも、同様とする。
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by lodaichi | 2009-10-22 06:40

医療観察法の参考文献

2008年4月のものであるが、医療観察法施行後2年を振り返るものとして(執筆者は裁判官)以下のものがある。

判例タイムズ 1261号19頁
 医療観察法施行後2年の処遇事件の処理状況について

判例タイムズ 1261号25頁
 医療観察法施行後2年の現状と課題について
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by lodaichi | 2009-10-21 17:52 | 医療観察法
<中大教授殺害>公判前整理手続きは11月11日
Excite エキサイト : 社会ニュース

10月2日起訴で、11月11日に公判前整理手続きが入っている。

つまり、起訴から約1ヶ月半弱で公判前整理手続きになっている。

これは、千葉での状況とは全然異なる。

千葉では、
 公判前に付する決定から検察官の証明予定事実記載書の提出及び予定証拠の開示まで約3週間を要している。

東京でも同じなんだろうか?

そうであるにしても、開示された証拠を見て、類型証拠開示請求をしたら1ヶ月半弱では弁護側としては何もできないまま第1回の公判前整理手続きが来てしまうことになる。

東京は、この発想自体が違うのだろうか。
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by lodaichi | 2009-10-19 15:30

覚せい剤の譲り受け

<覚せい剤>購入容疑の小学校教諭を逮捕…大阪府警
Excite エキサイト : 社会ニュース

 覚せい剤の譲り受けという容疑で小学校教諭が逮捕という記事。

 警察は、譲り渡した側から、「誰にいつ譲り渡した。」という供述をとり、裏づけ捜査をして、逮捕状をとる

 報道では、小学校教諭も購入を認めているようだが、警察のリーク情報である。

 報道でこう書かれていても、実際に弁護士が面会に行くと、「いや、そんなことは言ってませんよ」ということもあるので、弁護士は報道をうのみにしてはいけない。

 ところで、譲り受けた側が否認していると、譲り受けについて起訴することが困難な場合がある。

 まず、目撃者がいないケースがほとんど。

 譲渡した方とそうでない方との供述が食い違っている場合、どちらを信用したらいいのかという問題が生じる。

 それに、渡した物が本当に覚せい剤だったのかという点も問題もある(これは自白していても問題となる)。

 であるから、否認事件であると、譲受というのは、結構不起訴になる可能性がある 

 もっとも、覚せい剤の譲受を被疑者が否認していても、覚せい剤の所持、使用狙いという場合があり、そちららを捜査側としては狙っている場合があるので、本件となっている譲受罪だけでなく、その辺までふまえて被疑者から事情を聞く必要が弁護士としてはある。
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by lodaichi | 2009-10-16 10:40
複数の被告人を併合して審理するかどうか、これが主観的併合の問題である。

これまで同一事件では、複数の被告人の審理を行うことは普通に行われてきた。
しかし、裁判員裁判事件では、そのような複数の被告人の審理を行うことが裁判員の負担となるのでは?という問題がある。

今のところの千葉の検察庁では
”同一事件では1つの起訴状で起訴したい。
分離するかどうかは、公判前整理手続で裁判所が判断してほしい。”
と考えているようだ。

裁判所は、
 主張・証拠関係が異なる被告人相互については、併合せずに分離して審理する方向
で考えている。

 今後は、「主張、証拠関係が異なる」というのを、どの範囲で捉えていくかということが問題となっていく。

 また、共犯事件で審理が別になれば、証人となるべき人(例えば、被害者や鑑定を行った鑑定人など)をどうするのかという問題も生じる。

 例えば、共犯が5名いるとして、被害者が5回も証人として出てこなければならないとしたら、これは被害者としても非常に大変である。

現在出ているアイディアとしては、期日前尋問の活用がある。
公判前整理手続きが終わるくらいのタイミングで期日前尋問をして、各弁護人にも反対尋問をした上で、裁判員には、その証人の尋問のDVDをみせる、という方法をとるというものである。
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by lodaichi | 2009-10-10 21:08

入国管理局

外国人の刑事事件を取り扱う場合、入国管理の知識が必須である。

入国管理を取り扱うのは、
 入国管理局
である。

私は、修習生などに
「入国管理局は、どこの省に属しているのかね?」
と聞くのだが、
中には「外務省」と堂々と答える人間もいるから困る。

入国管理局は、法務省管轄である。

入国管理局の以下の組織図を見れば明らかである
http://www.immi-moj.go.jp/soshiki/index.html

さて、この組織図の中に
 収容施設
といわれるものがある。
 入国管理センター
ともいわれるものだが、これは全国で3か所しかない。

東日本では、茨城県の牛久市というところにあるが、限りなく牛久駅からは遠く、千葉県からは車を使えばであるが、わりあい近い(それでも、事務所からは1時間と少しかかるが)

これは、成田空港が近いことと関係しているのだろう。

当事務所で、難民申請関係の仕事をしている弁護士はここによく通っている。
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by lodaichi | 2009-10-07 20:30
千葉でよくある裁判員裁判の類型は、成田空港で摘発される密輸事案であろう。

千葉で2例目の裁判員裁判は、
 成田国際空港で覚せい剤約1.5キロをスーツケースに隠して持ち込もうとしたという
 覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)
のケースであった。

 自白事件で、争点は量刑。
 
 裁判員がどのような判断をするか、注目していたが、
  求刑・懲役12年、罰金700万円
に対して、
 懲役8年、罰金500万円
というものであり、従来とそんなに変わらない。

毎日新聞
http://mainichi.jp/select/jiken/saibanin/news/20091001k0000m040094000c.html

「高度な知識が必要で(裁判員裁判に)なじまない。素人にどんな判断ができるのか」と疑問を呈した裁判員もいたということであるが、量刑を決めるにあたっては、やはり従来の量刑傾向を参考にせざるを得ないだろうから、このような薬物の持込の事案は従来とあまり変わらない結果がでてしまうのかもしれない。
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by lodaichi | 2009-10-05 07:58