3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

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刑事弁護を勧める理由

 当事務所では、新人弁護士に刑事事件をやることを勧めている。

 その理由は以下のとおり。
1 刑事事件は、民事事件に比べて、比較的短期間で事件の区切りがつく
2 民事事件よりも、外にでなければいけない機会が多い(例えば、接見)ため、行動力が養成される
3 尋問をする機会が多数与えられる
4 法廷での発言の機会が多く、自ら主体的に法廷でも行動する必要性があるので、法定技術も養える
5 千葉県においては、刑事事件は件数も多く、バラエティーにとんでいる

もちろん民事事件もきちんとやってもらう(それゆえ、当事務所は刑事の専門事務所ではない)。

刑事事件を「勧める」というのは、上記の理由から、「刑事事件も是非やりなさい」という意味だ。
刑事事件を勧めない事務所もあるから(勧めない事務所のほうが多数派であろう)、それと比較すると当事務所の特色が分かってもらえると思う。
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by lodaichi | 2009-05-27 06:56
「証拠に基づいて事実を認定し、法律を適用して、結論を導く」
のが、法律家である。

 司法試験合格までは、”事実”は所与のものである。
 与えられた事実をもとに、法律を適用する一定の技術をマスターして、司法試験に合格できる。
 
 司法研修所においてはじめて、”事実”が所与のものでないことを学ぶ。
 事実認定は微妙な問題であることを修習生は学ぶが、それとは引き換えに、受験時代は批判精神を有していた判例に対して従属的になりがちである。
 即ち、事実は動くものであるが、法律や判例は動かないもののように考えがちになる。

 修習生は”事実”は所与のものでないことに気がつくが、”証拠”までは所与のものでないことに気がついているかは疑わしい。
 修習が進めば進むほど、修習生には裁判官の判断方法を真似することがうまくなるが、裁判官は所与の証拠によって事実を認定する者であるから、その思考方法をも共に受け継いでしまうからだ。

 そのたtめ、「この証拠関係を前提として」事実を認定するという思考に陥りやすい。

 これは、白表紙中心起案主義の弊害である。
 
 弁護士を育成するには、
  事実は発見された証拠によって変わりうる
  真実に迫るかは、いかに優良な証拠を発見できるかにかかわってくる
という思考方法、即ち、証拠は所与のものではなく、自ら発見、獲得していくものだという考えに変えていく必要がある。

 所与の証拠をもとに判断することだけに慣れると、証拠を収集獲得していく意欲が阻害され、弁護士にとって必要な調査能力が開発されない。

 修習生のときにこのような思考に気がつくこと自体困難かもしれないが、弁護士を目指す修習生には是非気をつけていただきたい点である。
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by lodaichi | 2009-05-24 15:10

委員会派遣制度の意義

2009年5月21日、
 裁判員制度
 被疑者国選の拡大
 検察審査会の起訴議決制度
が開始となった。

これにより刑事弁護は新たなステージに入ったというべきであるが、前回紹介した
委員会派遣制度は、今、どのような意味を持つか。

前回も述べたが、対象事件は次のようになっている。
1 裁判員対象事件のうち、被害者が死亡している事案(殺人、強盗殺人、傷害致死、危険運転致死など)
2 別罪名(別件)で逮捕されたものの、今後、上記被疑事件(本件)で逮捕される蓋然性が高い事件
3 その他、所管する委員会が派遣を相当と認めた事件

 上記のうち、1については、被疑者国選もあるので、この点では委員会派遣をする意味がないようにも思える。
しかし、被疑者国選は、被疑者の請求によるものとされており(注)、被疑者からの請求がないと国選弁護人がつかないのである。
重大事件を犯してしまった者の中には、自責の念に駆られて国選弁護人を請求することに消極的なものもないとはいえず、それゆえ、被疑者国選を機能させるには、委員会派遣が必要なのである。

 次に、2、つまり、「別罪名(別件)で逮捕されたものの、今後、上記被疑事件(本件)で逮捕される蓋然性が高い事件」であるが、これがもっとも意味があることになろうか。
 例えば、死体遺棄で逮捕されたとする。
 殺人などの犯罪で検挙される可能性がある犯罪類型である。
 しかし、死体遺棄は拡大された後の被疑者国選の対象の範囲外である。
 よって、そもそも死体遺棄罪では、被疑者国選がつかない。
 刑事被疑者援助制度(いわゆる刑事扶助)を利用する必要があるが、被疑者はそのような制度があることを知らないし、弁護士へのアクセス自体がそもそもない(千葉県では当番弁護士制度が廃止されてしまった→過去記事

 そこで、このような事件について、委員会派遣をし、派遣された弁護士は、刑事被疑者援助制度を利用するように被疑者に促して、弁護人(刑訴法上は、私選弁護人)となることが必要なのである。

(注)
 刑訴法は、37条で、「被告人」には職権で弁護人を附することができるとしているが、被疑者については、「その請求による」ものとされているからである(37条の2)。下記条文を参照のこと。

第37条 左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。
1.被告人が未成年者であるとき。
2.被告人が年齢70年以上の者であるとき。
3.被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。
4.被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。
5.その他必要と認めるとき。

 
第37条の2 死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件について被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
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by lodaichi | 2009-05-22 06:01

委員会派遣制度

この間述べたように、千葉県弁護士会では当番弁護士制度がなくなってしまう(→過去記事)。

しかし、委員会派遣制度は残る。

これまで委員会派遣制度は、当番弁護士制度とほぼ平行して運用されてきたのであるが、それが切り離されて、完全に独立の制度になると理解してよいだろう。

委員会派遣制度とは、弁護士会が重大事件であると判断した事件について、身体拘束中の被疑者からの依頼がなくても弁護士会において被疑者のもとに弁護士を派遣することをいう。

つまり、当番弁護士は、被疑者(又はその家族など)の依頼があった場合に当番弁護士を派遣するという制度であったのであるが、委員会派遣制度は、被疑者の要請がなくても派遣するところに最大の特徴があるのだ。

「弁護士会が派遣する」といったが、「委員会派遣」という言葉に表されているように、委員会、即ち、所管の委員会が派遣を決定する。

千葉県弁護士会では、現在、
 被疑者が成人の場合→刑事弁護センター
 被疑者が少年の場合→子どもの権利委員会
が所管となっている。

対象事件は次のようになっている。
1 裁判員対象事件のうち、被害者が死亡している事案(殺人、強盗殺人、傷害致死、危険運転致死など)
2 別罪名(別件)で逮捕されたものの、今後、上記被疑事件(本件)で逮捕される蓋然性が高い事件
3 その他、所管する委員会が派遣を相当と認めた事件

派遣弁護士の職務は以下のとおり。
1 弁護士会の派遣要請を受諾した後、24時間以内に被疑者と接見し、刑事手続き、少年審判手続きに関する法的助言をすること
2 特段の事情がない限り、当該事件を受任すること(私選か国選かは問わない)
3 特段の事情により当該事件を受任しないこととなった場合は、別の私選弁護人候補を探す、又は被疑者に国選弁護人請求をさせるなどといった対応により弁護人不在の状況に陥らないように手配すること

事件の配点は、委員会派遣名簿に登載されたものの名簿順配点が現在予定されており、名簿に登載するかどうかは自由である。
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by lodaichi | 2009-05-18 20:23

裁判所構内での接見


被疑者、被告人には裁判所の中でも接見することができます。

刑事訴訟規則にその手続要件が書いてあります。

(裁判所における接見等・法第三十九条)

第三十条 裁判所は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者が裁判所の構内にいる場合においてこれらの者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要があるときは、これらの者と弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者との接見については、その日時、場所及び時間を指定し、又、書類若しくは物の授受については、これを禁止することができる。

 千葉地裁はこの4月から新庁舎になりました。
 接見室は4室ありますので、是非有効に使ってください。

 なお、裁判所によっては接見室がないところもあります。 
 そのような場合に接見を認めないことが違法かどうかについて、訴訟が係属中のようです。

川崎簡易裁判所での接見妨害国家賠償請求事件(別サイト)
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by lodaichi | 2009-05-15 06:52
 本年5月21日に被疑者国選が拡大されることを受け、千葉県弁護士会では当番弁護士制度を廃止する。

 従来の当番弁護士制度は、
  被疑者について1回に限り無料で弁護士と接見できる
という制度であった。
 つまり、
 1 対象者は身体拘束をされた被疑者に限定される
 2 被疑者が接見する目的は問わない
というものであった。

 これを千葉県弁護士会では廃止し、今後は私選弁護人に純化するのが同会の方針である。

 私選弁護人制度は、上記との対比で行くと
1 対象者は被疑者のみに限らず、被告人も対象となる。身体拘束の有無は問わない
2 被疑者、被告人が私選弁護人を選任する目的を有する場合に限る
ことになる。

 今回の改正で、対象を広げた分、目的を絞るという運用となるのである。
 例えば、
”特に私選弁護人を選任しようとする目的はないが、自分の刑事処分の見通しがどうなるかをきいてみたい”
というようなケースは対象外となり、受付段階で排除される。

 千葉県弁護士会の当番弁護士制度は1992年4月から運用をしていたが、この5月21日で幕を閉じる。
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by lodaichi | 2009-05-14 08:47