3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

<   2009年 04月 ( 13 )   > この月の画像一覧

不起訴処分の告知

 勾留満期になった、被疑者が釈放されたとなったとたんに、弁護人であるあなたは、自分の仕事が終わりだと思っていないだろうか?
 被疑者が釈放になったのは、刑事訴訟法208条の規定によるものであるから、被疑者が起訴されなかったことは間違いないとしても、不起訴処分となったことを意味しない。

第208条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から10日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて10日を超えることができない。

 実際、実務では、通常、釈放時は不起訴処分ではなく、「処分保留」であることがほとんどだ。

 処分保留なのか、不起訴処分のなのか、弁護人が聞けば、検察官は教えてくれるが、そうでなければ、何の連絡もないのが通常。

 不起訴となった場合については、請求があれば、検察官は告知義務があるが(刑訴法259条)、請求がなければそのような義務はないからだ。
第259条 検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。

不起訴処分告知書の請求をする弁護人は多くないと思われるが、私は請求することにしている。

事件事務規程(法務省訓令)では、この関連の規定としてこんなものがある。

(不起訴処分の告知)
第73条 検察官が刑訴第259条の規定により被疑者に対して書面で不起訴処分の告知をする場合には,不起訴処分告知書(様式第113号)による。
[PR]
by lodaichi | 2009-04-28 20:09

告訴取消し

Q 器物損壊罪の被疑者段階の刑事弁護で、被害者と交渉したところ、被害者が示談および告訴の取り下げを受け入れてくれることとなりましたが、示談書等はどのような形式にすればいいですか。通常の示談書に加え,さらに何か別途書面をとる必要があるでしょうか。

A まず、用語の問題ですが、
 告訴取り下げ
と思われている方が多いですが、
告訴の”取消し”が正確な用語です。

刑訴法
第237条 告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる。
 
 器物損壊罪や強姦罪のような親告罪では、示談&告訴の取消しが重要なポイントになります。
 特に、告訴は、237条からもわかるように、公訴提起までに取消しをしてもらわないと、意味がありません。
 
 ところで、質問は、示談書だけを作ればいいのか、それとも別に告訴取消書というようなものを作成するのかということがテーマになっています。

 このような質問が出てくること自体、先を読むことができるようになった証拠です(ど新人のときは、このような質問自体ができません)。
 
 さらに、自分でこの質問について回答できればよかったと思います。

 示談とは法律上どういう意味を持つのか?
 告訴とは法律上どういう意味を持つのか?

 そうすると、
 示談とは、民事上の契約
 告訴とは、訴訟法上の問題で捜査機関に対しての意思表示
ということに気がつくはずです。
 
 そうなれば、示談と告訴取消しというのは、別々に作成することが必要であるということになるはずです。
 告訴取消しは原本が必要ですが、それを捜査機関に出してしまったら、示談書の原本が手元に残らないということも実際上の問題としてはあります。

 書式は、
「告訴取消書」
でググればでてきます

 インターネットが使えなかったころは、条文から自分で書式を考えたものですから、経験をつめば自分で”こういう風に書けばよいかな”とあたりをつけた上で、インターネットを参照するという段階に進むことができるでしょう。
[PR]
by lodaichi | 2009-04-27 20:03
事務所の弁護士から
「ある被告人の件で、裁判所に勾留場所変更申請書を提出したのですが、被告人の移送の日が決まったというので、裁判所からは申請を取り下げられるよう求められましたので、取り下げをしておきました」
という報告があった。

 この運用(取り下げをやんわりと要請されること)自体は、以前から少なくとも千葉地裁ではあったので、この弁護士が取り下げに応じたこと自体は問題ないのであるが、これがどのような法的構造に基づいて行われているのかについては、このブログではまだ書いていなかったようなので、私の考えを記しておく。

 まず、勾留場所変更申請で知らなければならない条文として、
刑事訴訟規則80条がある。

(被告人の移送)
第八十条 検察官は、裁判長の同意を得て、勾留されている被告人を他の刑事施設に移すことができる。

 これは”移送同意”と呼ばれる制度である(改正前は、「移監同意」といったものだが)。
 検察官は、通常この規定をつかって、警察の留置場から、拘置所へ被告人を移送する。

 もうひとつ覚えておかなければならないものある。
 最高裁の平成7年決定である。
 京都弁護士会の若松弁護士の著述(→HP)から引用する


 ”裁判官又は裁判所の職権により、従前の旧代用監獄より拘置所に勾留場所を変更することについては、検察官又は検察官出身者による者の否定説があったが、判例上は肯定説が多かったようである。
 そして、この問題について、平成7年4月12日の最高裁第三小法廷の決定(判時1529号156頁)において、「勾留に関する処分を行う裁判官は、職権により被疑者又は被告人の勾留場所を変更する旨の移監命令を発することができるものと解すべきところ」と判示して、被疑者又は被告人について、裁判官による「職権による移監命令」を発する権限を認めた。これによって、裁判官の職権による旧法上の移監命令の発令は明らかになった。”

 つまり、この決定により裁判所の職権による移送命令が最高裁により認められたのである。

 刑事訴訟規則80条とこの平成7年最高裁決定を大前提として、先の弁護士の言葉を法的に説明していく。

 同弁護士は、
 A ある被告人の件で、裁判所に勾留場所変更申請書を提出したのですが、
 B 被告人の移送の日が決まったというので、
 C 裁判所からは申請を取り下げられるよう求められましたので、取り下げをしておきました
といっていた。

 このうち、Aは、最高裁平成7年決定で認められた裁判所の職権による移送命令の発動を促したものということになる。

 Bは、これが実務の運用なのだが(千葉地裁だけかもしれんが)、裁判所は、弁護人から勾留場所変更申請がくると、求意見を検察官にするのだが、検察官が問題がなければ、検察官は刑事訴訟規則80条に基づく移送を行うのである。
 だから、裁判所からみると、あくまでも弁護人の申請に対して職権を発動したのではなく、検察官サイドの移送に関して、移送同意をしただけということになる。

 弁護人の申請はまだ宙ぶらりんになってしまうのであるが、弁護人には当初の移送という目的が達せられればいいのであるから、裁判所としては、「勾留場所変更申請を取り下げてください」という要請をするということになるのである。

 実は、このような一連の流れは、弁護人が被告人の刑事記録を読みにいけば明らかなのであるが、そのようなまめなことをする弁護士はほとんどいないため、以上の理屈に気がつかないで、ただ裁判所のいわれるがままに取り下げを行っている者が多いのではないかと思われる。

 もしこれを読んでいる修習生がいるならば、刑事記録の第三分類をよくよく見ておいてほしい。
 移送申請がなされたケースでどのように記録がなっているのか、以上のような視点からみていただければ、なにげなくつづられた1枚1枚の書面に意味が付されているのがわかるであろう。
[PR]
by lodaichi | 2009-04-24 08:25
千葉県弁護士会の裁判員裁判登録弁護士数は、103名(全会員は435名)

裁判員の事件数は多めに見て300件
とすると、1人あたり年間3件と考えている

以上、4月21日付け千葉日報の弁護士会会長のインタビュー記事より。

「裁判員の事件数は多めに見て300件」というのは、かなり多めの数字である。
昨年及び一昨年の事件数について→過去記事
[PR]
by lodaichi | 2009-04-22 09:38

機動捜査公判担当

2009年4月20日の千葉日報に裁判員制度への検察の対応を聞く、千葉地検検事正へのインタビュー記事が掲載されていた。

 その中で、「機動捜査公判担当」という部署を2008年4月から設置した旨の発言があった。

検事正の発言
「制度をにらんで昨年4月から公判部と捜査部にまたがって対応する”機動捜査公判担当”を設置した。
 刑事部と公判部に所属する16人が専従し、事件捜査の段階から公判前整理手続きまで立証上の難しい事案では公判でも対応する」

これだけでは、機動捜査公判というものが、おぼろげにしかわからない。
その機能については次の記載が参考になる。

片山 真人 検事(平成12年任官)の発言
「 平成16年4月から同17年3月末まで,東京地検公判部の機動班で勤務しました。
 機動班とは,医療過誤事件,火災事件,ニアミス事件などの特殊な業務上過失致死傷事件や国際的かつ組織的な大型マネーロンダリング事件などの複雑かつ大規模な事件の公判立会を担当する部署です。
 東京地検のような大規模な地検では,通常,捜査部と公判部とに別れ,捜査部の検察官が捜査を担当し,当該事件を起訴した後,公判部が記録を引継ぎ,公判立会を担当することになりますが,複雑かつ大規模な事件の場合,検察官による迅速かつ的確な公判立証を可能とするため,早期に問題点や証拠関係を把握しておくことが必要となります。
 このような観点から,機動班では,当該事件の捜査段階から捜査部の応援に入り,同事件の起訴後,引き続きその公判立会を担当しています。」

東京地検では以前からこのような「機動班」というものがあったようだ。
ただ、千葉地検のネーミングは「機動捜査公判担当」であり、東京地検の機動班が基本的に公判部に所属しているのに対し、千葉地検のものは、刑事部と公判部にまたがっているようにも聞こえるので、その詳細は微妙に異なるのかもしれない。
[PR]
by lodaichi | 2009-04-21 10:07
千葉県警本部、6月1日より新庁舎の供用開始
だそうである(本日付千葉日報)

今まで県警本部には留置施設はなかったのであるが、おそらく留置施設が設置されているはずである。
所在地は、
千葉市中央区長洲1-9-1
[PR]
by lodaichi | 2009-04-20 15:26
 今日、裁判所の前を通ったら、裁判員制度開始までを告げる電光掲示板が
 「あと32日」
を告げていた。
 
 5月21日以降に起訴されるケースについては、裁判員制度が適用されることとなる。
 
 裁判員制度は、弁護士会では、公判をどう執り行うのかという点に研修の比重がおかれているような気がするが(例えば、反対尋問の研修など)、最大のポイントは、公判前整理手続きにあると思う。

 この手続きをどう行うかで、公判で行うことも(ひいては上訴審で争えることも)決まってしまうわけであるから。

 しかし、公判前整理手続きというのは、地味な印象なのか、あまり研修会のようなものを聞かない。

 今の時期なら、裁判員制度の適用はなく、公判前整理手続きを経験することができるので、うちの事務所の新人弁護士にも積極的にとるように勧めたところ、今回同弁護士が公判前整理手続きのある事件を担当することとなった。

 やはり実践によって、勉強してもらうのが一番である。

 そういえば、本日の新聞に寺田寅彦の日記の一節が書いてあった。
「大学が事柄を教えるところではなく、学問の仕方を教え、学問の興味を起こさせるとこ. ろであればよい。本当の勉強は卒業後である。歩き方さえ教えてやれば、卒業後にめい. めいの行きたいところへ行く。」

これを法律事務所に置き換えるとこうなるか。
「法律事務所は、実務の知識を教えるところではなく、実務の仕方を教え、実務の興味を起こさせるとこ.ろであればよい。本当の勉強は卒業後である。歩き方さえ教えてやれば、卒業後にめいめいの行きたいところへ行く。」

歩き方を教えるというのは難しいが・・・
[PR]
by lodaichi | 2009-04-19 19:14
 刑事弁護人として、被告人から「実刑になったら自分はどうなるのか」という質問を受けることがある。

 または、その家族や関係者から、同様の質問を受けることがある。

 そのために、受刑者がどのような状態に置かれるのかについても関心を払う必要がある。

 刑務作業については、以前触れた→過去記事

 今回は、面会や手紙の発受について。

 これも法務省のHPがある。
 実務の状況については、これを参照すれば、十分である。

刑事施設に収容されている被収容者との面会や手紙の発受等を希望される方へ
[PR]
by lodaichi | 2009-04-15 08:09
これまで
法定刑を調べるべきだ
被疑者国選の現状と拡大する範囲は何か
裁判員対象事件とは何か
なんていうことについて、書いてきたが、ではどういう風に実際に思考するのかを試してみよう。

まず、あなた(弁護士)が、当番の派遣だということで、弁護士会から要請を受けた。
罪名は、強姦罪

最初は、条文をみて、法定刑を確認する
強姦罪の条文は
(強姦)
第177条 暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
となっている。

ここで、強姦といわれたから、強姦だけ見ているのでは、本来は不十分だ。
被疑者段階というのは、”事実は流動する”ということは常に頭においておかなければならない。
だから、これは強姦致傷にもなるかもしれないし、強盗強姦になるかもしれない。
ここでは、そこのところの考察は省くが、発展しそうな犯行形態も視野に入れて、事前調査を(といっても条文をみるだけだが)しておく必要がある。

さて、条文をみたら、その次。
これまでいってきたことをチェックリスト風にまとめると、
・被疑者国選適用事件にあたるか
・法定合議事件か
・裁判員対象事件に当たるか
となる。

 結論は
 ・被疑者国選適用事件である(短期1年以上の刑;当然5月21日以後も被疑者国選対象事件である)
 ・法定合議事件である(短期1年以上の刑)
 ・裁判員対象事件ではない
となる。

 なんでこのようなことを考えるかというと、今後の手続きがかわってくるし、それに伴い被疑者・被告人に対しての説明が変わってくるからだ。
[PR]
by lodaichi | 2009-04-11 07:48
千葉日報に
2008年の千葉県の裁判員対象事件の数が掲載されていた。

対象事件数は172件。
2007年は214件だったそうだから、だいぶ減少している

172件の内訳は、 
 強盗致傷 42件
 覚せい剤の輸出入、製造 37件
 殺人(未遂含む) 26件
 強姦致傷 12件
 強盗殺人・強盗致死 9件
 強盗強姦 9件

裁判員対象事件とは何かについて
過去記事
[PR]
by lodaichi | 2009-04-10 07:55