3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

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刑事の控訴事件では控訴趣意書を書くのが、当面の大きな仕事となる。

控訴趣意書を書くに当たっては、当然のことながら、控訴理由をどのように構成するかということを考えなければならない。

一審の弁護から引き続きということになると、自分が弁護人として関与したポイントにだけ集中してしまうことが多いだろうが、本来は控訴審の弁護はそれだけではいけないと考える。

例えば、一審では公訴事実を争わず、情状のみを主張したとする。
被告人は量刑に不満で、控訴をしてほしいといい、控訴した場合、弁護人としては、量刑不当を争おうとすることは当然のことである。
しかし、控訴理由というのはそれだけに限られるわけではない。
詳細は、刑訴法の教科書に当たってほしいが、いろいろ控訴理由はあるので、それにあたらないか、ひとつひとつチェックすべきだ。
極端にいえば、一審のあら捜しをして、法的に間違いがあれば、それを控訴理由とすべきだといえるだろう。

民事の事件ではあるが、判決に署名を忘れて、原判決が取り消された例もある

福岡簡裁:裁判官、署名忘れる 判決取り消しに(毎日新聞)
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by lodaichi | 2009-03-31 21:55

裁判員対象事件

以前、被疑者国選の対象事件について書いたが(→過去記事
裁判員対象事件についても書いておこう。

 これは、被疑者段階で自分が受任する(又はしようとする)事件について、被疑者に今後を説明する上で必須の知識だからだ。
 
裁判員対象事件は、刑事訴訟法を見回してもどこにも書いていない。
”裁判員の参加する刑事裁判に関する法律”
にこれは書いてある。

 対象事件は以下のとおり。
1 死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に関する事件(法2条1項1号)
2 法定合議事件(法律上合議体で裁判することが必要とされている重大事件)であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関するもの(同項2号)

これを罪名別に一覧表にしたものは法務省のHPにでている
PDFファイル


ただ、これは実務ではあまりでてこない事件も多く(というか、見たこともない犯罪の方が多い)、正確だが、大ざっぱに覚えるのには向いていない。

覚え方としては、自分としては、こんな風に考えた。
まず、2号の方をみて、
 故意行為+死亡の結果
がある事件は裁判員対象となると。
 ここから、殺人とか傷害致死が対象になることはすぐにわかるだろうし、強盗とか強姦、強制わいせつ致死がそれに加わっても同じだから
 強盗殺人、強盗致死
 強姦致死
 強制わいせつ致死
なども対象事件となることがわかる。
 
 交通事故関係では、
 危険運転致死
が対象事件だが(危険運転自体が故意の行為)、自動車運転致死や業務上過失致死は、法定合議事件でもないし、故意の犯罪行為とはいえないから、対象から外される。

 これで2号はおさえられたことになる。
 問題は1号だ。
 死刑が法定刑として入っているもの(これは直感的にわかりやすい)。
 2号で該当しないが、1号に該当する死刑事件として、実務上よく出てくるものとしては、
  現住建造物放火
がある。
 「無期」のみが法定刑に入っているものは、意外とおとしやすい
 これは丸暗記するしかないだろう。
 もっとも頻発するものは
 ・強盗致傷
であろう。
 千葉県では、
 ・営利目的による覚せい剤の輸入(輸出や製造も同一法定刑だが、ほとんど見たことがない)
も多い。

 普段は、死刑や無期が法定刑に入っていても目に留めないことが多かったが、こうやって裁判員裁判対象事件を考えてみると、この辺の法定刑をしっかりおさえておくことも大事だ。
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by lodaichi | 2009-03-30 08:14
被疑者国選がこの5月から拡大をすることとなるが、千葉県弁護士会では、弁護士一人あたりがどのくらいの数でこれにあたるのかということについて、説明しておく。

これは、今後千葉県で弁護士をしたいと考えられている方にも参考になるであろうし、現在千葉県で弁護士をしている人でも、今後がどうなるのかを考えてもらう上で必要と考えるからだ。

さて、統計的なことについては、だいぶ前の記事になってしまったが、2005年 07月 21日に
”勾留請求件数と当番弁護士の関係”
という記事を書いた。

そのときに、日弁連が算出した千葉県における必要的弁護事件の件数は、
ているのであるが、これは以下のとおりとなる。
4,574件
(内訳)
 本庁  3,096件
 松戸  698件
 木更津  342件
 八日市場 438件
であった。
   
 その当時、千葉県弁護士会の当番弁護の登録者数は243人であったので、1人あたり18.8件が担当する計算となる。

 2005年から約4年が経過したが、勾留件数はおそらく下降傾向なので、拡大後の被疑者弁護事件の件数は前記の
  年間4500件
ということで想定しておけば、間違いなかろう。

 弁護士人口の増加で、千葉県でも登録数は400人を超えたから、当番弁護の担い手は300人にはなるだろう。

 そうすると、
 4500÷300=15件
ということになり、これが大体年間で割り当てられている件数である。

 結局、被疑者弁護事件の件数がかわらなければ、担い手が増える事が、一人当たりの負担感を減らす事になるだろう。
 
 年間15件というのは、当事務所のように比較的刑事弁護が多い事務所からすれば、まあ普通の件数かと思うのであるが、そうでない事務所からすると、その半分くらいつまり7~8件が負担感の少ないところではないだろうか。

 そうすると、被疑者弁護事件で見る限り、担い手は現在の倍、すなわち600人くらいいてちょうど良いという結論になろうか。
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by lodaichi | 2009-03-25 08:15

必要的弁護事件

必要的弁護事件については、刑事訴訟法289条が規定しているところである(本記事末尾に条文を引用)。

条文をみていただければわかるが、2項、3項は結構極限的な場合で、実務でそうそう例があるというものではない。

289条1項は、
死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
と規定しているが、
では、長期3年以下の懲役若しくは禁錮にあたる事件又は罰金しかないような事件を審理する場合はどうなのか?
という疑問をもったことがあるだろうか。

 例えば、死体遺棄事件のみで公判請求されるケース(死体遺棄は、3年以下の懲役である)
 無免許運転罪のみで公判請求されるケース(1年以下の懲役又は30万円以下の罰金)
 などがそれにあたる。
 
 こういう事件でも、実務では(国選)弁護人がつくのが普通である(私選弁護人は当然どの事件でもつけられる)。

 いや、もしかすると日本ではこのようなケースでもつけない場所があるのかもしれないが、少なくとも千葉の本庁の実情を見る限り、必要的弁護事件でなくても、被告人の請求がなくても、職権で国選弁護人を選任していると思われる。

 これは、条文上は、刑訴法37条5号によるものであるが、その実質的な理由は、裁判官の負担軽減であろうと思われる。

 私が修習生だったころ(もう15年も前の事である)は、酒気帯び運転だったか、無免許運転だったか忘れたが、道路交通法違反で公判請求されたケースで弁護人がついていなかった後半を傍聴した事があるが、裁判官が、被告人に証拠を同意するか不同意にするかだけで、だいぶ説明を要しており、これなら弁護人を選任した方がよいのではないかと思った覚えがある。
 
 弁護人がいたほうが被告人のためにも良いし、現在の運用は是とされるべきだろう。

 ただ、弁護過疎地域では、このような運用がなされず、必要的弁護事件でない事件では、289条を字義どおり反対解釈しての運用(?)がなされているところもあるかもしれないので、そのようなケースがあったら、教えていただきたいと思う次第である。


第289条 死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
2 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき若しくは在廷しなくなつたとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を付さなければならない。
3 弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。

第37条 左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。
1.被告人が未成年者であるとき。
2.被告人が年齢70年以上の者であるとき。
3.被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。
4.被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。
5.その他必要と認めるとき。
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by lodaichi | 2009-03-24 06:57
被疑者国選の拡大時期と範囲について、先般、とある弁護士から質問を受けたので、修習生だけでなく、あまり刑事弁護に慣れていない弁護士も、この辺のことがわからないのかと改めて認識した次第である。

被疑者国選は現在は、法定刑が短期一年以上の事件について適用されている。

この適用範囲が、2009年5月21日から拡大され、必要的弁護事件すべてに適用される。

必要的弁護事件とは、長期三年を超える法定刑のものをいう。

だから、長期が「三年以下」という法定刑については適用がない。

ここまでの知識範囲、基本中の基本であるので、修習生でもしっかり押さえておいてほしい。

ここまで押さえた上で、刑事弁護人は具体的に自分が携わる事件に被疑者国選の適用があるのか否かを把握しておくべきである。

その手段としては、問題となる犯罪の法定刑をしっかりと把握しておけばよい。つまり、面倒くさがらずに、条文をひくことだ。

ここでも、法定刑を押さえおくことの重要性がわかっていただけるかと思う。
過去記事参照
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by lodaichi | 2009-03-23 12:34
地方公務員である教師が被疑者となった場合、弁護人としては
 教員の職及び教員免状について
注意を払う必要がある。

 というよりも、依頼者としては、職を失わないというほうがメインの関心事であろうから、刑事事件よりもこちらの方をメインに考えるのが弁護人としての仕事ということになるかもしれない。
 
まず、
1 教員の職の問題
であるが、これは地方公務員としての処分の問題であるといっていいだろう。

 これには、「失職」と「懲戒免職」を知っておく必要がある。

 「失職」というのは、禁錮以上の刑に処せられた場合は、それが執行猶予付きのものであ
っても地方公務員法第16条第2項に該当し、同法第28条第4項の規定によって、失職となるものである。
 このように失職するかどうかは、刑事事件の処分と連動している。

ついで、「懲戒」であるが、法律上は、戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができることとなっており(地方公務員法29条1項)、「懲戒免職」がもっとも重い処分となる。

 懲戒は、懲戒権者が行うもので、必ずしも刑事事件と連動しない。
 つまり、刑事事件にならなくても、懲戒権者が懲戒処分を行うことはありうる。

 それゆえ、弁護人としては、懲戒処分がどのような場合に行われそうか、懲戒手続きが行われるとなった場合にどのように防御していくかということが問題となっていく。

2  教員免状の失効の問題
 前項で述べたものは地方公務員法上の問題であり、教師でなくても、地方公務員全般について該当することであるが、教師の場合には、「教員免状の失効の問題」という特殊な問題がある。

教育職員免許法という法律があり、10条に失効事由が規定されている。

失効事由は多いが、刑事事件との絡みで言えば、

懲戒免職になった場合又は
禁錮となった場合(執行猶予でも)は、
教育職員免許法第10条の規定により免許状はその効力を失う。

ということを抑えておけばよいだろう。

つまり、刑事事件のみならず、懲戒の問題ともリンクするのである。
ここからも、懲戒の問題をなおざりにしてはならないことがわかる。
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by lodaichi | 2009-03-18 08:51
自由と正義3月号に懲戒処分を掲載された弁護士が自らのブログでそのことについて触れている。

 自由と正義には、要旨(懲戒された行為)しか載せられていないが、懲戒書には懲戒委員会の判断部分がある。
 刑事の判決で言えば、「主文」と「理由」のうちの「罪となるべき事実」だけが、自由と正義には載って、量刑の理由などは載らないといえば、わかってもらえるだろうか。

このブログには、
懲戒書に添付の懲戒委員会の議決書に記載されていた同委員会の判断
を載せている。
なかなか、普通は読めないので、読んだことのない方には参考になろう。

銀座のマチ弁さんのブログ
懲戒処分関係]自由と正義3月号が届きました
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by lodaichi | 2009-03-16 21:51

被疑者弁護の必要性

千葉県弁護士会では、毎月担当者が当番弁護士の統計を弁護士会のメーリングリストにアップしてくれる扱いになっている。

先月分の報告を見たが、当番弁護士に行った件数に対する受任率は10%強くらいで、ここ数年かわっていないようだ。
受任率が10%というのは、
 当番に行った弁護士の10%は受任するが、そのほかの90%は受任しない
ということだ。
 つまり、9割の弁護士は当番に行ってもアドバイスだけして帰ってくるというのである。

 以前であれば、
 当番弁護士=1回のアドバイスで終了
というような扱いもやむをえなかったところがあるが、被疑者国選制度の拡大が本年(2009年)5月21日に予定されていることを考えると、このような状態は望ましいとは言えない。
 
 現状からすると、9割の弁護士は本年5月21日以降に被疑者国選に該当するような事件であっても、被疑者弁護の必要性を感じずにいるということになる。
 つまり、被疑者弁護として何をしたらよいのかということがわからない=被疑者は起訴されてからの国選で十分だなどと思っているのではないか。

 このような考え方は刑事弁護というものは何かと言う根本に関わる問題であると思う。

 基本中の基本のようなことであるが、この点についての関心は薄く議論は広まっていないのが現状だ。
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by lodaichi | 2009-03-11 07:33

法定刑を調べておく理由

法定刑を調べるべきことについては、以前書いたことがあるが(→過去記事)、なぜ法定刑を調べるべきかについて思いつくままに書いてみる。

・司法試験の段階では、犯罪の成否しか勉強しない。つまり、成立の要件の問題(犯罪論)しか考えていない。
 実務では、犯罪論ももちろん必要だが、犯罪成立の効果の問題(量刑論)が重要である。
 法定刑は量刑論のとっかかりになる。

・新人弁護士のときに、被疑者・被告人から「先生、私の刑はどのくらいになるでしょう」と聞かれ、それに答えられないときに、「具体的にどのくらいの刑になるかは今後調べてみますが、法律ではこうなっています」と回答することはできる。

・弁護人としてはあまり問題にならない場合が多いが、公訴時効がきているかどうかのチェックには必須。

・国選の被疑者弁護人がつくかどうかという問題ともからむ。
 この辺、修習生はあまり意識していないようであるが、どの犯罪が被疑者弁護の範囲内か否かは意識して勉強しておいてほしい。
 

 
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by lodaichi | 2009-03-07 11:19
ホームレスでも申請受理を 厚労省、生活保護で徹底【共同通信】

 たしか7,8年位前のことになると思うが、ホームレスの方の刑事事件を担当したことがある。
 執行猶予がつくような事案であったので、居住先を確保しようと、生活保護の担当者に電話をして、申請できるかどうか聞いてみたが、
 「住居がないと駄目です。ホームレスは住居があることにはあたりません」
という回答だったので、がっかりしたことを思い出す。

 派遣切り問題の影響で、厚生労働省も重い腰をあげたようだ。

 この厚生労働省の指示が勾留中の者にもあたるといえるのかどうか、記事だけからはよくわからないが、活用の余地は十分あると思う。

 ただ、ホームレスの場合、どこの自治体に申請すればよいのかというのは問題が生じるだろう。
 現在の派遣切りの場合は、ホームレスをしている場所の自治体を念頭においているのだろうが、勾留されている場合はどうなるのか?という問題はある。
 この辺はやってみないとわからないだろうが。

 現在は弁護士会でも生活保護委員会ができてきたから、そこに所属している弁護士の知恵も借りながら申請をしていくことはできるだろう。

 厚労省は不況による派遣切りなどで仕事と住まいを失った労働者やホームレスの人から生活保護申請があれば、住居がないことを理由に拒まず受け付けるよう全国地方自治体に6日までに指示した。同省は住む場所がないことが申請を受理しない理由にならないとの見解を示してきたが、昨年12月、大津市福祉事務所がホームレスの申請を「住居がない」という理由で受け付けなかったことが判明し、批判が出た。
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by lodaichi | 2009-03-06 21:23