3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

<   2009年 01月 ( 14 )   > この月の画像一覧

 前回、検視、それも代行検視について書いたが(前回記事)、代行検視に関する裁判例をちょうど目にしたので、引用しておく。

裁判所の判例システムでインターネットでも見ることが可能なものである
こちら
事件番号平成19(モ)697
事件名文書提出命令申立事件
裁判年月日平成20年11月17日
裁判所名・部 名古屋地方裁判所 民事第8部



判示事項の要旨

19年前に実施された一酸化炭素中毒死事故に係る代行検視に関して作成された死体検案書の写し,供述録取書及び写真撮影報告書につき文書提出命令が申し立てられた事案において,
1 上記代行検視の後に捜査手続に移行していないことなどを理由に,上記各文書は,何らかの被疑事実の捜査に関して作成された書類ではないとして,民訴法220条4号ホ所定の文書に該当しないとされた事例
 2 民訴法223条6項に基づき上記各文書をその所持者に提示させた上で,上記各文書について,その提出により犯罪の予防,鎮圧又は捜査等に支障を及ぼすおそれ等があるとの監督官庁の意見に相当な理由があると認めるに足りない,上記各文書の記載内容から見て,その提出により公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれが具体的に存するものとは認められないとして,民訴法220条4号ロ所定の文書に該当しないとされた事例
[PR]
by lodaichi | 2009-01-30 15:55

検視

刑事訴訟法には
検視
の規定がある(229条)。

 刑事弁護で殺人事件などにあたると検視調書というものを読むことがあるが、そういえば、この検視調書どんな根拠規定があるのかと思って、刑事訴訟法を見てみた。

 ところが、刑訴法には根拠規定はないのだ。

 刑訴法229条には
 変死者又は変死の疑のある死体があるとtきは、検察官が検視をしなければならない
と規定されていた。

 検視調書というのは、警察官が書くものとばかり思っていた(これまで検察官が書いたものは見たことがない)ので、これには少々面食らった。

 同条第2項には、検察事務官または司法警察員にこれを代行させることができるとなっている。
 
 どうやら、この辺にヒントがありそうだ。

 松尾先生の刑事訴訟法の教科書をみたら、2項は、「代行検視」と呼ばれ、実際は、司法警察員が検視をしているのが大半だと書いてある。

 なるほど、刑訴法の規定とはともかく実態は警察官が検視は行っているわけだ。

 では、「検視調書」はどこからでてくるのかというと、これも松尾先生の教科書にヒントがあった。

 国家公安委員会は、
「検視規則」を定めている。

この検視規則、全部で6条しかないが、その5条にこんな規定がある。
これが検視調書の根拠規定である。

(検視の代行)
第五条  刑事訴訟法第二百二十九条第二項 の規定により変死体について検視をする場合においては、医師の立会を求めてこれを行い、すみやかに検察官に、その結果を報告するとともに、検視調書を作成して、撮影した写真等とともに送付しなければならない。
[PR]
by lodaichi | 2009-01-27 22:06

「弁護士の発言」

 修習生のときは、「立場」というものをあまり考えないものである。
 立場などというものはかえって邪魔なものとも考えがちである。

 しかし、弁護士になって一番に考えなければならないのは、自分が「弁護士」として見られるということだ。
 自ら発した言葉は、すべて「弁護士の発言」としてとらえられてしまう。
 一般の方にとって(特に依頼者にとって)、その発言はとてつもなく重いのである。
[PR]
by lodaichi | 2009-01-26 19:38

家族の更生協力意思

1月15日付で「情状における監督」という記事を書き、「情状弁護においては、監督という言葉は不適切である」旨述べた。

 それでは、なんという言葉を用いるべきかという点については触れていなかったのであるが、
神山・岡論文(2009年1月号自由と正義p107)に、「家族の更生協力意思」という言葉が出ていた。

 これが言葉としては適切だろう。
[PR]
by lodaichi | 2009-01-18 07:42

余罪記載で公訴棄却

起訴状に余罪、公訴棄却 「予断与え違法」と横浜地裁

ニュースでも書かれているが、極めて異例である。

ほかのニュースは、なにが起訴状一本主義違反になったのか書いていないものが多かったが、引用した47ニュースには書いてあった。

 どうやら脅迫文言の中で、余罪を起訴状に書いてしまったようである。

 この記事だけでもよくわからないが、
”裁判官は「起訴事実より大きな余罪を含めた処罰を求めるもので違法」と指摘。「裁判所の公平性が疑われることは否定できない」”
とまで言い切ったというのであるから、そういう起訴状の書き方だったのだろう。

 弁護人が公訴棄却を求めたかどうかは書いていないので、本件について弁護人がどれだけ公訴棄却に寄与したのかどうかは不明である。

 本件を離れて考えると、被告人が起訴状が違法かどうかというのは、被告人は法律家ではないからわからない。

 そこをチェックするのは、法律の専門家である弁護人の役割である。

 しかし、起訴状を見せて、被告人の認否だけを問う弁護人の多いこと。

 事実のみをみて、法律を軽視してしまってはいけない。
 
 事実もみて、かつ、法律問題も考える
 当然のことだが、実務にはいると忘れがちなことではある。

 そのためには、どんなに平凡なようにみえる事件であっても、法律問題がないか、鵜の目鷹の目で探っていくような視線が必要である。

 
[PR]
by lodaichi | 2009-01-15 20:28

情状論における「監督」

刑事弁護の情状論において、監督という言葉はわりと安易に 使われるが、一般人には分かりにくいから、裁判員裁判では使うべきでない。

そもそも、監督とは
1 取り締まったり、指図をしたりすること。また、その人や機関。「工事現場を―する」「試験―」
2 映画・舞台・スポーツ競技などで、グループやチームをまとめ、指揮・指導する役の人。「撮影―」
3 日本の聖公会やメソジスト教会における第二次大戦前の職制名。主教、司教にあたる。
4 法律で、人または機関の行為が、その守るべき義務に違反していないか、その目的達成のために適当か否かを監視し、必要なときには指示・命令などを出すこと。
である。(大辞泉)

 特に、上記4項で指摘されているように、「監督」(義務)というのは、犯罪の成否や損害賠償の成否を決する法律上の用語であるのに、それと同一の用語を、弁論で使うのはいかがなものかと思う。

上記の4項の使用方法に従えば、少なくとも成人の被告人の家族には、被告人に対して守るべき法律上の義務などというものは存在しないのだから、成人の刑事事件ではまず監督権限事自体がないというべき。

また、犯罪が行われているのだから、監督権限があるとしても、それは失敗したととらえるべき。

通常の組織であれば、監督不行き届きで、監督の地位を降りるくらいの事態が起こったといえる。

「監督を誓わせる」というように弁論で言ったところで、その実際の内容は、今後、被告人が犯罪を犯さないように家族などが気を付ける、配慮するということにすぎない。

だから、監督という大げさなことばを使うより、
 何が原因で家族などは犯罪が起きたと考えているのか
 犯罪が起きてから、これまでに家族などは何をしてきたのか
 今後何をどう気を付け、配慮するのか、それは具体的にはどのようなことか
を証拠として提出することが大切であり、弁論でもそれを書くべきであると考える。
[PR]
by lodaichi | 2009-01-15 10:05

神隠し殺人事件公判

神隠し殺人事件公判

MSN産経ニュースはかなり詳しい公判の様子をレポートしている。

ここまでマスコミが報道してしまっていいのだろうかという思いもないではないが、刑事弁護に携わるものとしては、裁判員裁判を控えて、現在の公判がどのように行われているのか非常に参考になる。

ところで、検察官の冒頭陳述によれば、本件の動機は以下のとおりである。

検察官「いよいよ事件の核心に入りたいと思います。被告はこれまで、女性と交際した経験がありませんでした。そのための努力は何もしませんでした。そして、1人の女性に強姦し続けて快楽におぼれさせ、性奴隷にすることができると考えるようになりました」

被告人も特にこれを争っていないようだ。

マスコミでは、この「性奴隷」という言葉に反応して、おぞましいなどという論調である。
検察側は、死刑求刑も視野に入れているようだ。

弁護人としては、このような動機をもつにいたった被告人の心理を掘り下げて、被告人の更生可能性を主張するような戦略が必要になるのではないかと思った。
[PR]
by lodaichi | 2009-01-14 08:45

仮釈放率の低下

仮釈放率が、今や50%を切る瀬戸際にあるそうだ。

その理由として、川本満隆関東地方更生保護委員会委員長は、「理由は様々考えられるところであるが、仮釈放中の再犯を強く意識した地方更生保護委員会の仮釈放への慎重な姿勢もそのひとつであると考えている」と述べている(罪と罰第46巻1号)。

更生保護制度「改革」は、保護観察への不信から始まったが、その影響は仮釈放率(出所受刑者を100とした場合の仮釈放者の比率)にも如実に表れている。
[PR]
by lodaichi | 2009-01-13 12:40
隠し撮り容疑の警部補を逮捕 神奈川県警、本人は否認

 記事によれば、被疑事実の概要は、
電車内で、ボックス席の向かいに座った女性の脚をカメラ付き携帯電話で撮影した
というもの。

罪名
 記事によれば、
 県迷惑行為防止条例違反容疑
であるが、正式には、
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反事件。

 脚を撮影した行為が同法に該当するか問題となるが、
 最高裁判所第三小法廷平成20年11月10日決定
があり、これが参考になる。

 同判例は、
ショッピングセンターにおいて女性客の後ろを付けねらい,デジタルカメラ機能付きの携帯電話でズボンを着用した同女の臀部を撮影した行為が,被害者を著しくしゅう恥させ,被害者に不安を覚えさせるような卑わいな言動に当たるとされた事例
というものである。

 田原裁判官の反対意見(無罪とすべし)があるが、多数意見は簡単に同法の該当性を認めている。
[PR]
by lodaichi | 2009-01-12 21:15

起訴議決制度

2009年に施行されるものといえば
裁判員裁判
がもっとも有名だが、
それ以上に
被疑者国選制度の対象拡大が弁護士にとってはインパクトがある。

また、検察審査会法が改正されて、

が創設されることも重要である。

起訴議決制度は、弁護士の間でも、まだよく知られていないようであるが、最近マスコミでも報道がされた。
民意反映 検察審査会改革 強制起訴も可能 司法制度、より身近になる!?
[PR]
by lodaichi | 2009-01-11 19:38