3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

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即決裁判手続き

 即決裁判手続きは、2006年10月2日に施行された手続きである。刑事訴訟法350条の2~350条の14に記載がある。

 即決裁判手続きの裁判の特例として、裁判所は即日出来る限り即日判決の言い渡しをしなければならないとされているし、また、即決裁判手続きにおいて、懲役または禁錮の言い渡しをする場合には、その刑の執行猶予の言い渡しをしなければならないとされている。

 このような規定の存在によって、弁護人の弁論の仕方を変える必要があるだろうか。従来の弁論では「執行猶予付きの判決を求める」というような主張が行われてきた。
 しかし、即決裁判手続きにおいては、執行猶予の言い渡しをしなければならないのであるから、執行猶予付きの判決を求めるという言い方はそもそも意味がないのではないかと思う。

そこで、方法としては
①罰金刑の弁論をする方法
②検察官の求刑、執行猶予期間の吟味をした上での、弁護人の考えを示す方法
この2つが考えられる。

 ①の罰金刑の弁論であるが350条の14には「懲役または禁錮の言い渡しをする場合」というふうに規定されているので、罰金刑の弁論をすること自体は、可能と考えられる。
 しかし、従来弁護人は検察官が公判請求をしてきたケースについては、ほぼ自動的に執行猶予付きの判決を求めていたので、十分な吟味をしないまま罰金刑の弁論を連発すると、弁護人の感性を疑われるということがおこる。
罰金刑の弁論をすることをためらってはならないけないけれども、それは相当慎重な考慮したうえでの弁論をすべきだ。

 通常の方法としては②の方法が妥当であろう。
 このような方法をとるのであれば、執行猶予期間は通常3年が基準とされていることからして、基準であれば3年の執行猶予期間ないしは、基準を下回るような要素があるのであれば、それよりも短い2年などの執行猶予期間の弁論を求めるべきである。
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by lodaichi | 2008-05-26 08:56
 責任能力が刑事の公判で争われるケースは、そう多くはないですが、被疑者段階では問題となることも多いはずです。

 被疑者弁護が活発になれば、責任能力の理解もこれまで以上に必要になってくるでしょう。

 また、検察官は何ら責任能力に留意していないのに、本当は問題とするべきだったというようなケースもありえます。

 責任能力の勉強も最近はいろいろな文献が出ていますが、
 国立精神・神経センターが作成した
鑑定書作成の要領と作成例(平成18年版)
鑑定書書式(解説つき)(平成18年版)
は参考になります。

 ネットで公開されていますので、こちらからどうぞ。
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by lodaichi | 2008-05-23 07:35

懲戒情報(刑事)

大阪弁護士会:ベテラン国選を懲戒 否認事件で「手抜き」(毎日新聞)


 報道によれば、刑事事件の弁護人は

 被告人が起訴事実を否認したのに、検察側が裁判所に取り調べるよう請求した証拠すべてに同意した。

ことが懲戒事由(戒告)となったようです。

 大阪弁護士会は、
 弁護人のこうした行為について「弁護方針の検討や、被告の意見を確認しないまま初公判に臨んだと言わざるを得ない」と手抜き弁護を指摘。さらに検察側の請求証拠にすべて同意した点を「被告の防御権が損なわれた可能性は否定できず、誠実な弁護活動を行わなかった」と判断

とのことです。
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by lodaichi | 2008-05-20 14:52 | 弁護士懲戒事例(刑事関係)

懲戒情報(刑事関係)

懲戒情報(刑事関係)

自由と正義2008年5月号
2件あり

1件は、既に報道されたもの→過去記事
もう1件
 業務上過失致死事件の弁護人が示談交渉の目的で遺族を訪れ、被害者に100%過失があるかのように発言し、被害感情を傷つけた
→戒告
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by lodaichi | 2008-05-19 21:02 | 弁護士懲戒事例(刑事関係)
 今回は、まとめの言葉について(前回は→こちら)。

 まとめの言葉としては、
 「以上の見地から,被告人には酌むべき事情が充分にあるのであり,被告人を実刑に処し,その規範意識を涵養する必要性は全くないというべきである。したがって,本件においては,執行猶予を付し,被告人に社会内での更生の機会を与えるべきである。」
なんて書いたりするが、これを法律を知らない人に見せると全くちんぷんかんぷんなのだ。

問題は、漢語ないし漢語的言い回しのオンパレードである
列挙してみると

「以上の見地」
「実刑に処し」
「規範意識を涵養する必要性」
「社会内での更生の機会」

先ほどの部分を、私なりに易しく書いてみると、こんな感じか。
これでも難しすぎるだろうか。

 「被告人が起訴された行為を起こしたことは間違いありませんが、このような色々な事情もあります。実刑は被告人にとって厳しすぎます。
 弁護人としては、執行猶予のついた判決が妥当だと考えます。」

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by lodaichi | 2008-05-16 13:06
 聞いてわかりやすい弁論要旨を書く試み

 この試みの趣旨については→過去記事

 例えば、被告人の家族状況についての記載。

(従前の記載例)
 被告人には妻及び幼い子どもが一人あり、妻は専業主婦である。仮に被告人が実刑判決となり服役することになれば、その妻子は収入の手段を失い、直ちに生活に窮することになる。

(改訂例)
 被告人には子どもが一人おります。
 子どもは、まだまだ手の掛かる年頃です。
 被告人はこの子どものために会社で働いており、子どもが独立するまで養っていかなければなりません。
 妻は専業主婦です。
 被告人とともに家庭を築いてきました。
 この家庭を維持する責任があります。
 そのためには、今後とも主婦として、夫を支え、子どもを養育していくことが必要であると弁護人としても考えますし、妻自身もそのように望んでいると、法廷で証言をいたしました。

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by lodaichi | 2008-05-11 21:54
 起訴後の取り調べについて、先般ある若手弁護士と議論していたところ、どうも起訴後の取り調べについて無条件で検察官は許されると考えており、それが最高裁の考えだと思っているようであったので、「それは違うから」と注意を促しておいた。

 起訴後の取り調べの最高裁判例(最高裁判所第三小法廷昭和36年11月21日決定刑集第15巻10号1764頁)自体、あまり知られていないようだ(私がロースクールで講義したときはこの判例を知らない学生がほとんどだった)。
 判例百選でもこの判例は、”おまけ”のページに追いやられてしまったため、目に触れる機会が少ないのかもしれない。

 いずれにせよ、司法試験的にはともかく、実務では頻繁に起訴後の取り調べが行われており、これに対抗する側の弁護人としては抑えておかなければならない判例である。

 先に述べたように、”最高裁が起訴後取り調べを許容した”と覚えているむきが多いが、それは違う。  
 最高裁のHPは、その辺正確である。

判示事項 起訴後における捜査官による被告人の取調の適否-起訴後作成された被告人の捜査官(検察官)に対する供述調書の証拠能力

裁判要旨 起訴後においては被告人の当事者たる地位にかんがみ、捜査官が当該公訴事実について被告人を取り調べることはなるべく避けなければならないが、これによつて直ちにその取調を違法とし、その取調の上作成された供述調書の証拠能力を否定すべきではない。


 判例が問題としたのは、「起訴後作成された被告人の捜査官(検察官)に対する供述調書の証拠能力」である。
 そして、起訴後取り調べ自体については、「起訴後においては被告人の当事者たる地位にかんがみ、捜査官が当該公訴事実について被告人を取り調べることはなるべく避けなければならない」としているのである。
 もっとも、それで取り調べが直ちに違法になるわけではないよと述べているのだが、ここからプラスアルファの条件があれば、違法になる場合があり得るという結論を得ることもできる。

 前記の要旨にはでてこないが、上記の最高裁決定では、あてはめで
本件において、第一審判決が証拠に採用している所論被告人の検察官に対する昭和三五年九月六日付供述調書は、起訴後同年九月七日の第一回公判期日前に取調がなされて作成されたものであり、しかも、右供述調書は、第一審公判において、被告人およびその弁護人がこれを証拠とすることに同意している。
と述べている。
 取り調べが第1回公判期日前になされていること、供述調書に同意していることをも加味しているわけだ。

 だから、この最高裁判例が起訴後取り調べを無制限に許容したと見るべきではない。
 実際、この最高裁判例がでたあとも、起訴後の取り調べを制限する裁判例が下級審ででている(模範六法にも載っているので、そちらを参照されたい)。

 起訴後の取り調べを防止すべき、弁護人が「起訴後の取り調べが無制限で許容される」と考えているようでは、いかん。 
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by lodaichi | 2008-05-08 06:27

毎日新聞の特集記事

毎日新聞が
クローズアップ2008:再犯知的障害者の更生 司法・福祉、連携で支援という特集記事を載せている。

メジャーなテーマとは言い難い内容だが、刑事弁護に携わるものとしては必見。

なお、同記事で触れられている
 03年に出版された山本譲司・元衆院議員の「獄窓記」(ポプラ社)
も必読である。
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by lodaichi | 2008-05-06 20:03
 今年中には、被害者参加制度が始まり、来年5月からは裁判員制度が施行される。
 これまで弁論要旨は裁判官にわかればよかったが、これからは、被害者にも裁判員にもわかるような表現にあらためなければならない。

 一例をあげる。

 弁論要旨の冒頭では
 「本件について,被告人は公訴事実を認めており,弁護人もこれを争うものではない。しかし,被告人には以下のとおり酌むべき事情があるのであり,執行猶予付き判決とするのが妥当である。」
というような表現を使うが、法律には素人の方と議論をしたが、この表現自体、「むつかしくてわかりにくい」というのことだ。

 「被告人」とか「公訴事実」とか「執行猶予付き判決」というような法律上の用語もわかりにくい原因だが、それは今回はおいて、表現を改めてみることとする。

 「被告人は公訴事実を認めています。
 弁護人としても公訴事実は争いませんが、次のような事情もありますので、執行猶予のついた判決を求めます。」


どうだろうか。
これだけでも一般の方には随分違うらしい。
「以下のとおり」とか「酌むべき事情」というのは、法律家には当たり前かもしれないが、一般的な用語ではない。
特に、「酌むべき」は、何と読んだらいいかわからないようだったし、「くむべき」と聞いても何のことだかピンとこないという。
まだ、「情状酌量」という言葉の方がテレビで聞くからわかるという声をあった。

では、「酌むべき事情」に変えて、「有利な事情」とするのはどうだろうかと疑問をぶつけてみた。
しかし、”「有利な」という言葉は、被害者から見てとても気にかかる。有利とか不利とか、そんな言葉ではないのではないか”というような意見があった。
なるほど、なかなか難しいものだ。

あと、短文で書くこと。
複文は、わかりにくさを倍増させるようだ。

 
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by lodaichi | 2008-05-06 10:16
 広島における接見禁止準抗告運動が成果をあげていることについて、日弁連からきた新聞に書かれていました。

 この運動は、接見禁止決定に対して、弁護人側から準抗告をする運動で、今枝弁護士が準抗告申立書の書式を作成し、弁護人に負担がかからないように準抗告ができる体制を整えたものです。

 この運動は成果を上げ、接見禁止決定自体が減少したということです。
 このように弁護人の取り組みで実務を変えることができるということを示したことは大きな意味をもつと思います

 後に述べるブログで今枝弁護士は、
接見等禁止決定に対し,こと細かく(準)抗告申立をなしていくことは,接見等禁止から当該被疑者を解放することに加え,そもそも接見等禁止がなされることへの事前の抑止効果となることが期待される上,準抗告審決定書の中での理由が捜査状況や証拠関係等の可視化に資するなど,その効果は極めて大きい。
と述べておりますが、同感です。

 ところで、私は日弁連の新聞の記事を読んで、今枝弁護士が作成したという書式を入手したく思いましたので、広島弁護士会に電話したところ、快くファクスしてくださいました。
 拝見しましたが、色々な事案に対応できるように書かれており、非常に参考になります。
 
 なお、接見禁止準抗告運動については、今枝弁護士自身がご自分のブログで記事を書いていますので、ご参照ください→こちら
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by lodaichi | 2008-05-02 07:45