3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

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「罪と罰」を読んでいたら、救護義務違反の条文がいつのまにか増えていたことを知った。
救護義務違反は、実務でもよくでてくる犯罪であり要注意だ。

平成19年道交法改正(同年9月19日施行)で、酒気帯び運転の法定刑が引上げられたが、救護義務違反の厳罰化もあわせてなされていた。

従来の規定は
「車両等(軽車両を除く。以下この条において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があった場合において、第72条(交通事故の場合の措置)第1項前段の規定に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
と規定されていた。

ややこしいことに、この条文は温存され、次のように2項が追加された
「前項の場合(救護義務違反)において、人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」

つまり
運転起因性あり→117条2項
運転起因性なし→117条1項
ということになった。

となると、問題は「起因する」の意味である。
この点、平尾覚法務省刑事局付検事の見解をそのまま引用しておく
条文上は「起因する」としか書いてないから、一つの解釈論であるが、今後弁護人として解釈論を展開するときの一つの参考にはなろう。

「起因する」と言えるためには、問題となる運転行為が、人の死傷について因果の起点となったと言えることが必要であると解される。人の死傷について因果の起点となるためには、当該人の死傷の結果が、運転者の運転行為に内在する危険性が現実化したものであると認められる必要があるであろう。当該人の死傷が運転者の運転の危険性が現実化したものと認められるのではなく、別の要因、例えば、当該死傷を負った被害者の行為の危険性が現実化したものであり、運転者の運転行為の危険性が現実化したものではないと言わざるを得ない場合には、当該人の死傷は運転に「起因する」とはいえない。
言い方を変えるならば、「起因する」と言えるためには、単に人の死傷との間で条件関係が存在すれば足りるのではなく、社会通念により判断しても、当該人の死傷が運転を原因として発生したと言い得る必要がある。

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by lodaichi | 2008-04-30 08:18
 いわゆる2号後段書面の証拠の採否が問題となったケースがあった。

 このケースは、参考人が捜査段階での検面調書での被告人に不利な供述をひっくり返して、公判で証人として呼ばれた際には、被告人に有利な供述をしたというものであった。
 
 検察官は、刑訴法321条1項2号2号後段書面として、証拠請求。
 弁護人としては、当然これに反対することとなる。

 弁護人としては、裁判所が証拠請求した場合に備えて、証拠採用決定に対して異議申立をしておかなければならない。

 この異議のポイントであるが、
1 異議の申立は直ちにしなければならない(刑訴規則205条の2)
2 法令違反であることを指摘しなければならない(規則205条1項)
ということである。

 と、ここまではほぼどの本にも書いてあるが、では、どのように異議を実際に出したらよいのかということについては、残念ながらずばり書いてある本は少ない。

 司法研修所が出している「刑事弁護実務」(いわゆる白表紙)や青林書院「刑事弁護の手続きと技法」にも書いていない。

 私が参照できたもので、この点を書いているのは、日本評論社「刑事弁護」だけであった(ほかにもいい本があれば教えてほしい)。

 同書によれば、
証拠決定が出たら、その場で、
「異議あり。裁判所の決定は*条*項に違反する」
といわなければならないとされており、伝聞証拠の場合は、違法の理由として、
「伝聞法則である刑訴法320条1項の規定に違反する」
といえばよいとされている。

 有益な書式が多い、ミランダの会のホームページも参照したが、2号書面の異議申立の書式はないようである。
 書式集にあったのは、
 検察側証人採用決定に対する異議申立
 弁護側鑑定請求却下に対する異議申立
であった。
 前者では、
「検察官は、弁護人からの度重なる要求ににもかかわらず、右両名の供述を一切弁護人に開示しないまま、本証人申請に及んだものである。この状態で証人尋問を実施することは、被告人の防御の権利(日本国憲法三七条二項、市民的及び政治的権利に関する国際規約一四条三項(b))を著しく侵害するものである。(以下略)」
と法令を掲げてあったが(→こちら)、後者については、法令を掲げておらず(→こちら)、残念ながら参考にならない。




 
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by lodaichi | 2008-04-27 15:25
 責任能力について重要な判例になると思います。
 弁護人としても、この判例の枠組みを利用して主張立証をしていくこととなるでしょう。

最高裁判所第二小法廷平成20年04月25日判決

裁判要旨
1 責任能力判断の前提となる精神障害の有無及び程度等について,専門家たる精神医学者の鑑定意見等が証拠となっている場合には,これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り,裁判所は,その意見を十分に尊重して認定すべきである。
2 統合失調症による幻覚妄想の強い影響下で行われた傷害致死の行為について,被告人が正常な判断能力を備えていたとうかがわせる多くの事情があるからといって,そのことのみによって心神喪失ではなく心神耗弱にとどまっていたと認めるのは困難とされた事例

 
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by lodaichi | 2008-04-25 20:28
<取り調べ録音録画>5都府県の警察で試行へ

 5都府県の警察とは、
  警視庁、大阪府、神奈川、千葉、埼玉
である。
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by lodaichi | 2008-04-23 21:02
 田舎弁護士の訟廷日誌(四国・愛媛)というブログで、
 光市母子殺害事件 の 差し戻し前控訴審の弁護人
という記事がでていた。

 差し戻し前の控訴審の弁護について言及したものはあまりないようであるから、参考になる。

 ところで、この記事では、

不自然な弁解を貫き通すということが極刑を招く可能性が高いということを、凶悪事件を弁護する際には、被告人に十分に説明する必要があります。
 そして、被告人がそのことを十分に理解した上で、それでもなお不自然な弁解を強く主張した場合に、弁護人は、それに拘束されるわけであり、弁護人に対してまで、強い非難を浴びせられるのは、正直、つらいところです。


との主張がある。
 この辺が一番微妙なところである。
 弁護人にとって「不自然な弁解」というのは、ありうるというのが、上記のブログでの主張であるが、はたしてそうだろうか。

 弁護人にとって被告人の「不自然な弁解」というのがありうるのか、ありえないのか、
 不自然だと弁護人自身が感じることと、それを被告人が主張するということをどうとらえるのか
このあたりについて、光市事件は大きな問題を提起しているといっていいだろう。

 死刑か無期懲役かは大きな問題であり、マスコミもそのような観点からとりあげているが、このような微妙な問題に多くの弁護士は直面しないから、その意味では私としては、この事件は一つの事例的な意味しか有しないと考えている。

 しかし、上記の「不自然な弁解」は大きな問題だ。
 弁護人をする限り、ほぼつきまとわれるといってよいだろう。
 その意味では、この事件の有する意味は極めて大きいといわなければならない。
 
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by lodaichi | 2008-04-23 20:47
最高裁判所第二小法廷平成20年04月15日決定

(要旨)
 捜査機関は不要物として公道上のごみ集積所に排出されたごみを刑訴法221条により領置することができる

(判示)
 ダウンベスト等の領置手続についてみると,被告人及びその妻は,これらを入れ
たごみ袋を不要物として公道上のごみ集積所に排出し,その占有を放棄していたも
のであって,排出されたごみについては,通常,そのまま収集されて他人にその内
容が見られることはないという期待があるとしても,捜査の必要がある場合には,
刑訴法221条により,これを遺留物として領置することができるというべきであ
る。また,市区町村がその処理のためにこれを収集することが予定されているから
といっても,それは廃棄物の適正な処理のためのものであるから,これを遺留物と
して領置することが妨げられるものではない。

(感想)
 上記の点は、これで決まったわけだが、やはりこのような領置手続きが許されるのか否かというのは、一審の弁護人としても気をつけるべきところだろう。
 一審の弁護人は、とかく、公訴事実が間違いないのかどうか、ということに重点を置くあまり、被告人に事実の有無を問うことに力をいれてしまいがちであるが、このような手続きが適法なのか否かという観点から考察を加えることは怠りがちであると思われる(自分がそうであったからなおさらそう思う)ので、注意が必要であろう。
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by lodaichi | 2008-04-21 21:08
 被害者参加制度について、被害者側に国選弁護人がつくことが決まった。

 日経ネットの記事
 犯罪被害者国選弁護人制度、改正総合法律支援法などが成立

 被害者参加制度は2008年12月までに施行される。
 裁判員制度(来年の5月施行)よりも実施時期が早い。

 マスコミにはとりあげられるのは裁判員制度ばかりで、被害者参加制度がとりあげられることはまずない。

 これは、弁護士業界における研修でも同様である。

 しかし、この被害者参加制度がうまく機能するかどうかは、被害者側弁護人に大きな役割がある。

 来年5月には被疑者国選が拡大することもあり、刑事弁護のマンパワーがますます必要とされる時代である。
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by lodaichi | 2008-04-17 07:56

判決謄本の請求

奥村弁護士が調書判決についてブログに書いています(→こちら

やはり、判決謄本は請求した方がよいようですね。
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by lodaichi | 2008-04-16 06:55
 鳥取の弁護士が自殺という記事が、岡山のローカル新聞に載っていた(→こちら)。

 弁護士が自殺したといっても、必ずしも記事になるわけではない(上記記事も硫化水素を使用したからというところが、報道価値が大きかったところだろう)から、いったいどのくらいの弁護士が自殺しているのかわからないが、日本人全体で自殺が3万人を超えているのだから、弁護士も、メンタル面を害する人がでてもおかしくない。

 おかしくない、どころか、弁護士は、人の悩みや苦しみに直面する仕事であり(特に、刑事はそうだ)、知らず知らずのうちに心が傷ついていっている可能性がある。

 この点は誰も心配してくれないから、自分で気をつけるほかはない。

 医療観察法の付添人をはじめ、精神科の知見を必要とする仕事が従来から比べると増えてきているが、うつの本も最近は多数出版されているようだし、それらの本を読んで、うつへの対処方法くらいは知っておいた方がよいと思われる。

 わかりやすい本しては、
大野裕医師の「『うつ』を治す」という本(PHP新書)
があります。

 
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by lodaichi | 2008-04-16 06:30
 立川防衛庁官舎住居侵入事件で最高裁決定がでた(本日付け)。
 決定本文は→こちら

 「法益侵害の程度が極めて軽微なものであった」という主張についての、最高裁の判断は次のとおり

 本件被告人らの立入りの態様,程度は前記1の事実関係のとおりであっ
て,管理者からその都度被害届が提出されていることなどに照らすと,所論のよう
に法益侵害の程度が極めて軽微なものであったなどということもできない。


 前提として詳細な事実認定。
 及び「管理者からその都度被害届が提出されていること」がポイントのよう。
 
 憲法論(表現の自由違反)については、次のとおり

 確かに,表現の自由は,民主主義社会において特に重要な権利として尊重
されなければならず,被告人らによるその政治的意見を記載したビラの配布は,表
現の自由の行使ということができる。しかしながら,憲法21条1項も,表現の自
由を絶対無制限に保障したものではなく,公共の福祉のため必要かつ合理的な制限
を是認するものであって,たとえ思想を外部に発表するための手段であっても,そ
の手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきである(最
高裁昭和59年(あ)第206号同年12月18日第三小法廷判決・刑集38巻1
2号3026頁参照)。本件では,表現そのものを処罰することの憲法適合性が問
われているのではなく,表現の手段すなわちビラの配布のために「人の看守する邸
宅」に管理権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われて
いるところ,本件で被告人らが立ち入った場所は,防衛庁の職員及びその家族が私
的生活を営む場所である集合住宅の共用部分及びその敷地であり,自衛隊・防衛庁
当局がそのような場所として管理していたもので,一般に人が自由に出入りするこ
とのできる場所ではない。たとえ表現の自由の行使のためとはいっても,このよう
な場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは,管理権者の管理権を侵害するの
みならず,そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得
ない。したがって,本件被告人らの行為をもって刑法130条前段の罪に問うこと
は,憲法21条1項に違反するものではない。このように解することができること
は,当裁判所の判例(昭和41年(あ)第536号同43年12月18日大法廷判
決・刑集22巻13号1549頁,昭和42年(あ)第1626号同45年6月1
7日大法廷判決・刑集24巻6号280頁)の趣旨に徴して明らかである。

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by lodaichi | 2008-04-11 20:58