3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

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 被害者弁護は、今後の新しい刑事弁護の領域として理解されるべきものであると思う。
 しかし、いまだ、この点について明確に意識して知識を習得していない弁護士が多いのではないだろうか。

 今回紹介する「更生保護における犯罪被害者等施策」は、被害者弁護の一環として理解すべきものである。

 
”更生保護における犯罪被害者等施策”
は、昨年(2007年)12月1日から始まっている。

 具体的には4つの制度が定められた。

1 意見等聴取制度
 ・・・加害者の仮釈放・仮退院について意見を述べることができるもの。
2 心情等伝達制度
 ・・・保護観察中の加害者に,被害者の方の心情を伝えることができるもの。
3 加害者の処遇状況等に関する通知
 ・・・加害者の保護観察の状況などを知ることができるもの。
4 相談・支援
 ・・・専任の担当者に不安や悩み事を相談することができるもの。

その詳細や問い合わせ先については、法務省のホームページに掲載されているので、そちらを参照いただきたい。
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by lodaichi | 2008-03-31 08:28

不法在留罪

 この間、入国管理法違反事件について、ある弁護士と議論していたら、「不法残留」と「不法在留」の区別がわかっていなかったので、その区別について書いておく。

関東管区警察局のHPに定義をやさしくかいてあるので、それを引用しよう。


Q 「不法残留」とは、どのような罪ですか。
A 外国人が正規に日本に入国・在留するためには、特別な場合を除いて、必ず在留資格が必要です。在留資格には、外交、興行、短期滞在、就学、定住者等27種類があり、それぞれに活動できる範囲と在留できる期間が定められています。この定められた在留期間を超えて日本に在留することを「不法残留」と言い、出入国管理及び難民認定法第70条第1項第5号違反として3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科されます。

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Q 「不法在留」とは、どのような罪ですか。
A 平成12年2月18日から改正出入国管理及び難民認定法が施行され、同法の中に「不法在留罪」が新設されました。不法在留とは、日本に不法入国又は不法上陸した者が、引き続き日本に在留する行為をいい、同法第70条第2項違反として、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科されます。

 引用終わり。

 つまり、不法残留は 70条第1項第5号の問題(いわゆる、オーバーステイともよばれる)
 不法在留は70条2項の問題である。
 
 なぜ不法在留罪が平成12年2月18日から施行されたのかというと、不法入国者が公訴時効で起訴できないというケースが多発したからである。
 
 不法入国は状態犯で、入国した時点から公訴時効が進行する。
 不法残留は、継続犯で、残留している限り公訴時効は進行しない。
 それで、不法入国は不起訴になるが、不法残留は起訴されるというアンバランスが生じたのである。

 そのため、そのアンバランスさを是正するために、不法在留罪が新設されたのである(といっても、もう8年も前のことだが)。

 10年以上弁護士をやっていると、こういうのは自分が体験してきたことなのだが、若手を見ていると(当たり前のことだが)、そういう歴史的経緯というのは伝わらないらしい。

 だから、こういうことを書くことも意味があることだろう。 
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by lodaichi | 2008-03-30 16:11
 今週、京都地裁で死刑判決がでていたが、その被告人の発言は、なぜ人を殺すのかということを考える上で、重要なものが含まれているような気がする。

 被告人は、親戚を殺害しているのであるが、その動機などについて次のように語っていたというのだ(東京新聞より引用

 被告は昨年九月からの公判で、伯母殺害の動機を「長年にわたって母をいじめ続けたから」と説明。証言に立った父親を「親せきから母を守ろうとしなかった」と責め、「半分以上おまえの責任だ」と食って掛かり、裁判長に制止される場面もあった。
 神奈川県相模原市の大叔父殺害については「自殺する勘定合わせに、殺してやろうと思った」。


 ここから読みとれる被告人の感情には、母親に対する愛情、父親に対する反感がある。
 そして、自殺志向・・・

 ドストエフスキーは、父親殺しをテーマに「カラマーゾフの兄弟」を書いているが、昔読んだこの本のいくつかの主題が思い出されるようだ。

 父親に対する反感・抵抗の未消化というのは、犯罪に伏在するテーマの一つのように思われる。

 被告人はこうも言っていたという

 今年一月には、死刑を求刑された直後の最終意見陳述で(中略)、手書きのメモを読み上げ「世間の恩恵を受けていないから、法律を守る義理はない」と結んでいた。

 
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by lodaichi | 2008-03-21 07:59

勾留に対する準抗告

 被疑者弁護が定着しつつあるが、身体拘束への異議申立はどの程度行われているのだろうか。

 勾留されてもやむをえないなどと弁護士が先走って考えてしまって、勾留に対する準抗告もしないということはないだろうか。

 勾留といえば、なんとかのひとつ覚えみたいに、60条1項の2号と3号をあげている勾留決定が多いが(勾留状謄本はとればこれらはわかる)、例えば、2号該当性が本当にあるのか、3号該当性があるのか、勾留の必要性があるのか、きちんと弁護人として検討しているかどうか自問自答してみなければならない。

 最近、勾留に対する準抗告審で、原決定が2号と3号をあげているのに、準抗告審では2号該当性は否定したものを見かけた。

 事案は、無免許運転。
 準抗告審が2号該当性を否定したのは、
 ・警察官に犯行を現認されて逮捕されている
 ・同乗者が被疑者の無免許運転したことを明確に供述している
 ・被疑者自身も犯行を認める供述をしている
ということにある。

 3号該当性は認めたので、勾留に対する準抗告自体は棄却されたが、安易な2号該当性を認める傾向に棹さす裁判所の態度を引き出せただけでも、準抗告をした意義は大いにあった事案である。
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by lodaichi | 2008-03-20 16:19

修習生的発想からの脱却

 ある修習生のブログを見ていたら、こんな記事が出ていた。
 
 終日、家裁の調停の傍聴をさせてもらいました。
 噂に聞く程、どろどろしてませんでしたが、見ていてあまり面白いものではありません。
 案件は、養育費の請求、夫婦関係調整、慰謝料(浮気相手へ)請求の3件でしたが、もう少し当事者は相手の立場に立ってものが考えられないものですかね。(あっ、できねぇやつらだから調停してんのか)仮にもいままで好きで連れ添った人ですよ。(そういう意味では慰謝料請求は好きなだけ言っても可)
 

 家庭裁判所修習の記事である。
 そういう意味では刑事とは関係ないが、気になったのは、この傍観者的態度だ。

 特に、「あっ、できねぇやつらだから調停してんのか」という点については、自分は別の世界に住んでいるものと思っているからこそ、発することのできる言葉であろう。

 このような修習生が、今の修習生の一般的な流れなのか、この人だけの特殊なものなのかはわからないが、当事務所に就職してくる弁護士も、修習生のうちに身についてしまった傍観者的態度を多かれ少なかれ持っている。

 このような傍観者的態度は、弁護士をする上では、まったく捨て去っていただきたいというのが私の考えである。

 つまり、「もう少し当事者の立場に立ってものが考えられないものですかね」というのが、修習生や新人弁護士を見るにつけ、もつ私の感想である。
 
 
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by lodaichi | 2008-03-19 07:32
 刑事施設で食品や日用品がいくらで購入されているか、気になったことはないだろうか。

 日弁連のサイトに、
 刑事施設における物品販売に関する意見
という全文PDF形式で59ページもの意見書がアップされていた。

 これは、
「矯正施設内で収容者が購入する食品および日用品の不当な値段は、民法709条、独禁法25条に該当するもので、調査をお願いしたい」
との被収容者からの申立てを受けてのものである。

 被収容者には切実な問題だ。

 だが、なかなか弁護人サイドからはこういう発想がわきにくい。

 私が注目したのは、物品の販売価格リストである(意見書p18~27)。

 こういうものが、こんな値段で売られているというのは、なかなかわからないものである。

 弁護人の生活感覚が問われる。

 なお、日弁連の意見の趣旨は以下のとおり。


意見書の趣旨
法務大臣及び法務省矯正局長において、各刑事施設の長に対して、

財団法人矯正協会が販売業者としての地位をほぼ独占する運用を直ちに改めるよう指導すべきである。
前項の目的を達成するため、販売業者を指定するにあたっては、新規参入を希望する民間業者に適切に情報を提供するなどして広く業者を募集し、できる限り多くの業者に参入させるよう効果的な運用を行うよう指導すべきである。

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by lodaichi | 2008-03-12 22:06

責任能力についての感覚

 今枝弁護士のブログに、「責任能力の問題」と題した記事が出ていた。
 
 以下の主張に注目した。

 もともと、「病気で犯罪をなした人は、処罰しても仕方がない。しっかり治療を受けて、治してもらうしかない。」という価値観が、日本には浸透していないのでしょう。いや、逆に言えば、日本人の価値意識からすると、そういう価値観は受け入れるべきではない、という感覚があるのかもしれません。

 なるほど。
 弁護士になる前の自分の感覚を思い出すのは難しいことだが、自分もそうだったかもしれないと思う。

 新人弁護士には、この辺の感覚はどうだろう。

 上記のような一般的な日本人の感覚のまま弁護を行うのか、理論的に武装した上で、行うのかで将来的には弁護士として大きな差が出てくるところだろう。
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by lodaichi | 2008-03-12 21:01

拘置所に受刑者はいるか

 多くの方が読んでおられると思われる弁護士のブログに
「拘置所に受刑者はいないのではないか」
という趣旨の記事が載せられていた。

 この主張は勘違いではないだろうか?
 元・女子刑務官 Blog
 には、次のような記載があり、こちらの方が私は正しいと思う。

拘置所で受刑者?言われてもピンとこない人もいるかと思いますので説明を。
通常、刑が確定したら、移送待ちの期間を過ごした後、刑務所で服役となるのですが、拘置所の経理作業(調理・清掃・営繕工事・舎房内雑用)をこなすために、A級の受刑者(しかもスーパー級)の受刑者がいます。未決の内に目をつけておいて、判決が下ったら、同じ施設で刑に服させるのです。自所執行受刑者と言われます。

 
 上記の弁護士のブログの影響が大きいと考えたので、このような記事を書いた次第である。
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by lodaichi | 2008-03-07 21:36

捜査の闇

 福岡地裁小倉支部での無罪判決について、コメントで「落合弁護士(元検事)がそのような捜査手法が昔から使われていることを指摘しています。」との貴重なご指摘を受けたので、早速同ブログを拝見した(→こちら)。

 驚いた。
 そのとおりであった。
 私も警察には批判的な方であるとは思っていたが、警察がこんなところまでやっているとは思わなかった。 

 警察が、供述獲得目的で、他の留置人を「エス」(S、スパイ)に仕立て上げ送り込む、という手法は、昔から使われています

 昔、ある警察官から聞いた話で、検事であった私に嘘をつくような状況にはなかったので本当の話と思いますが、殺人の嫌疑のある被疑者(別件で勾留中)から自白を得るため、その留置場にいるのはその被疑者だけにして(他の被疑者は他の警察に移すなどして)、夜中に急に照明を消したり、お経を流して聞かせたり、といったことをやった、ということで、そこまでやるかとあきれたことがありました。


 上記の警察官の話が本当であるとすれば、ひとりの(元)検察官が知っているというだけではなく、他の多くの(元)検察官も知っているということになるのではないか。

 そうだとすれば、なぜこのような事実が語られていないのだろうか(それとも語られているが、私が知らないだけか?)。

 検察官は知っていながら、その事実を(在職中はいざしらず)弁護士になっても語られていないということなのだろう。

 まさに捜査には「闇」があり、それを白日のもとにさらす作業が弁護士としては必要になるであろう。

 
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by lodaichi | 2008-03-07 21:21
弁護士 Barl-Karth先生からコメントをいただいたので(→過去記事)、それを見て感じたこと

 私は、過去記事で
 ”先達の使命は、批判ではなく、教育であると、かように私は思うわけである。
 そして、その教育という作業は、これまでの弁護士にかけていた視点・能力である。”
と書いたが、”教育”の仕方とか役割分担についてコメントしておきたい

 まず、刑事弁護士の能力として
  天才的な弁護士
  普通の弁護士
  一般のレベルを維持できない弁護士
の大雑把に3段階にまずわけてみる(上記はあくまで「刑事」の能力についてであり、これから述べることも刑事についてであるので、念のため)。

 私は、
 「普通の弁護士」が「天才的な弁護士」の仕事をそばで見ていても理解できない
 ましてや、
 「一般のレベルを維持できない弁護士」(通常、修習生もこのレベルである)は「天才的な弁護士」の仕事はまったく理解できない
と思う。

 弁護士 Barl-Karth先生が、コメントの中で、”修習生に起案をさせたが,「どいつもこいつも」と思った”というのは、上記の考えからすれば、当たり前で、通常の修習生は普通の弁護士、ましてや天才的な弁護士の仕事すら理解できないであろう。であるから、教えるほうがフラストレーションを抱えるのは理解に難くない。

 そこで、天才的な弁護士の仕事を理解し、それを普通の弁護士に翻訳(教育)ができる人材が必要である。
 つまり、
  天才的な弁護士
 と
  普通の弁護士
の間にいる弁護士、仮にこれを
  中2階の弁護士
とすれば、このような弁護士が必要なのである。

 教育が重要と私は説いたが、自分がどのレベルの弁護士かをふまえて、技を伝える必要がある。
 具体的には、

 天才的な弁護士は、中2階の弁護士を養成し
 中2階の弁護士は、普通の弁護士を教える
 普通の弁護士は、一般のレベルを維持できない弁護士の能力を引き上げる
というスタンスだ。

 弁護士数の多い東京とか大阪を除けば、中2階の弁護士の層は厚いとは思えない。

 かえって、この刑事の司法改革で、必要な知識量が著しく増大した結果、天才的な弁護士と普通の弁護士の差が開いているのではないかと懸念している。


 
 
 
 
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by lodaichi | 2008-03-07 08:45