3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

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(注) 下記文章中「当会」とは、千葉県弁護士会を指す。  

1 この度、日弁連において作成された統計資料を参照することができたので、標記の件について若干の検討を試みる。
2 平成15年の千葉における勾留請求件数は7565件であり(地裁・簡裁の総数)、全国4位である。5000件以上は以下のとおり。

 ①東京 27,624件     ⑥名古屋 7,039件
 ②大阪 11,551件    ⑦福岡 6,803件
 ③横浜 9,866件 ⑧神戸 5,052件
 ④千葉 7,565件
 ⑤さいたま 7,325件

 千葉の中での勾留請求の内訳は

 地裁本庁  3,180件
 地裁松戸支部  411件
 千葉簡裁  1,787件
 松戸簡裁  743件
 市川簡裁  154件
 木更津簡裁  565件
 八日市場簡裁  725件

となっている。
3 同年における当会の当番弁護士の受付件数は3183件である。これは前記の勾留請求件数(7565件)の42.1%であり、勾留請求件数に比較すると当番弁護士の受付件数との開きは今なお大きいことがみてとれる。
 もっとも、勾留請求件数に対する当番弁護士の受付件数の割合の全国平均は2003年においては43.21%であり、千葉はおよそ全国平均に近似する値であるから、当番弁護士の受付余地が大きいのは全国的傾向である。
4 一方、平成15年で公判段階で国選弁護人の付いた被告人数は、千葉は3094件で全国7位である。3000件以上は以下のとおり。

 1東京  11,931件    
 2大阪  6,022件
 3横浜  4,128件
 4名古屋  3,423件
 5さいたま 3,373件
6福岡  3,254件
7千葉  3,094件

 勾留請求件数に比べて、国選弁護人選任件数が全国ランクから見て低くなるのは、他県と比べて起訴する割合が低いのか、私選率が高いのか又はそのいずれかということになるが、参照した統計からはこの点不明である。
 千葉の中での国選選任の内訳は

 地裁本庁  1,179件 千葉簡裁  138件
 地裁松戸支部  382件 佐倉簡裁  2件
 地裁木更津支部  194件 一宮簡裁  1件
 地裁八日市場支部 239件 松戸簡裁  100件
 地裁館山支部  61件 木更津簡裁  45件
館山簡裁  8件
銚子簡裁  16件
東金簡裁  11件
八日市場簡裁 5件

である。
5 この平成15年の勾留請求件数をもとに、必要的弁護事件が占める割合を乗じて、必要的弁護事件の事件数を日弁連が算出しているのであるが、これは以下のとおりとなる。

 本庁  3,096件
 松戸  698件
 木更津  342件
 八日市場 438件
 計    4,574件

これが、2009年実施予定の被疑者国選の件数というのである。この数字は当会の当番弁護の登録者数243人(本年4月1日現在)で割っても、1人あたり18.8件となり、かなり負担感の大きい数字となる。
6 日弁連においては、各会の年令別構成も算出している(本庁と松戸のみ抜書きした)。

本庁管内弁護士
~29歳(11人) 30~34歳(36人) 35~39歳(21人) 40~44歳(17人) 45~49歳(20人)
50~54歳(27人) 55~59歳(36人) 60~64歳(22人) 65~69歳(16人) 70歳~(31人)

松戸支部弁護士
~29歳(3人) 30~34歳(6人) 35~39歳(5人) 40~44歳(1人) 45~49歳(7人)
50~54歳(5人) 55~59歳(9人) 60~64歳(8人) 65~69歳(2人) 70歳~(8人)

本庁合計237人のうち55歳以上が105人であり、この層が10年経てば65歳以上となるから、これを上回る人数を今後10年間で確保しなければ、現状維持すらおぼつかなくなる。
 松戸支部においても、合計54人中、55歳以上が27人と半数を占めており、事態は本庁より深刻である。
 筆者は従来から、本庁・松戸支部以外の地域の刑事事件の担い手の手薄さを問題としてきたが、これに加えて当会においても高令化問題による刑事事件の担い手不足のおそれが明らかになったというべきである。これを解消する地道な努力が求められる。
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by lodaichi | 2005-07-21 20:55 | 当番弁護士
1 この法律は、いわゆる池田小事件を契機として2003年7月16日に成立した。本格的な施行は2005年7月16日までの間に政令で定めることになっているが、本稿執筆時点(4月10日)で未だその政令が制定されていない。制定される際には、各地の弁護士会が大反対したが、今ではそれも忘れられてしまったのか、この法律の内容自体を多くの弁護士が知らないようである。本稿は、本法を全くあるいはほとんど知らない方を対象に、ごく大雑把に、本法を描くにとどまる。詳細かつ正確な知識を修得されたい方は、本稿を読むことなく、「精神医療と心神喪失者等医療観察法」(ジュリスト2004年3月増刊:町野朔編)を参照されることをお勧めする。
2 本法は、心神喪失等の状態で重大な犯罪を行った者に医療を受けさせるのか、受けさせるとしてどのような医療なのか(入院か通院か)ということについての要件や手続を定めたものだ。
 手続構造は少年法に似たところがある(職権主義構造である)から、以下必要に応じて、少年法とのアナロジーで説明する。
 審判を受ける者は、少年法では「少年」だが、本法では「対象者」という。 対象者は、殺人・放火・強盗・強姦・強制わいせつ及び傷害に当たる行為をした者である。傷害については、全ての傷害が入るわけではないから(33条23項)、自ずと重大なものに限定されるであろう。
 対象者は、心神喪失か心身耗弱と検察官か判決から認定されたもので、その処分が確定していることが必要である。最も多いのは、検察官が不起訴処分をした場合ということになろう。
3 事件は検察官の裁判所による申立てにより始まる(33条12項)。少年事件が送致で始まるのと似ている。
 次に、少年事件では観護措置がとられることが多いが、これにあたるのが鑑定入院命令(34条)である。鑑定入院命令による入院の期間は原則2ヶ月、場合により1ヶ月の更新ができることになっているから、どんなに長くても3ヶ月以内に事件は終了してしまう。
4 少年事件には付添人がいるが、本法でも対象者には付添人がつく。入院又は通院の審判には、付添人は必要的であり(35条12項)、付添人は、弁護士に限られる(30条12項)。
 付添人は事件記録を閲覧し、事件関係者に聴取するなどして、まず対象行為
を争うか否か検討する必要がある。対象行為がなければ、いくら対象者が心神喪失等の状態であっても医療に付する審判はできないからである。これは、少年事件においても非行事実がなければ処分できないことと同様である。
5 次に、対象者にふさわしい医療は入院なのか通院なのか、それとも医療に付さなくてもよいのかを付添人は検討しなければならない。少年法とのアナロジーで言えば、非行事実が認められるとして、少年院なのか保護観察なのかの検討をするのと同様である(もっとも、少年事件のような試験観察という制度はないが)。
 この検討の際には、「保護者」の協力が必要である。少年事件における「保護者」のような役割を本法の「保護者」も有する。本法の「保護者」は精神保健福祉法上の保護者と同一であり、
後見人(いなければ)→配偶者(いなければ)→親権者(いなければ)→家 裁の選任者
となっており、対象者の家族がなっている場合がほとんどである。
6 これらについて必要な調査をした上で、随時報告書及び意見書を裁判所に提出する必要がある。
 少年事件と同じで職権主義構造を有しており、伝聞法則の適用はないからである。
7 対象行為の有無は要するに事実認定の問題であるから、これまで多くの弁護士が培ってきた能力により対処は可能であろう(もっとも、対象者の知覚記憶・表現・叙述の程度によっては対象者からの供述のみに依存することは危険であろうが)。
 対象者が心神喪失は心身耗弱なのかという点及び対象者にいかなる医療が適しているかについては、精神医療上の知識が必要であり、この点において、今後、本法の付添人となる弁護士は研鑽が必要とされよう。
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by lodaichi | 2005-07-16 10:35 | 医療観察法
(注) 下記文章は、千葉県弁護士会の会報に当初載せたものである。同文章中「当会」とは、千葉県弁護士会を意味する。

1 弁護士会事務局において日弁連へ報告する「当番弁護士制度運用状況報告書」4月分から6月分までをもとに、当会の当番弁護士の実状について報告する。
2 受付件数
 2005年4月~6月の当番弁護士の受付件数は以下のとおりである(括弧内は前年同月の受付件数)。
  4月  198件(216)
  5月  266件(229)
  6月  253件(296) 
   計  717件(741)
 4月~6月の合計受付件数は前年比96.7%である。1月~3月が前年比76.4%であったので、受付件数の減少は下げどまっており、底打ちが近いとみるべきかもしれない。
 3 受任件数
 受任件数は以下のとおりである(括弧内は前年同月の受任件数)。
  4月  22件(23)
  5月  32件(25)
  6月  29件(34) 
   計  83件(82)
 4月~6月の合計受任件数は、前年比101%、受任件数についてはほぼ横這いである。
 受任率(受任件数/受付件数)をみると、今四半期のそれは11.5%ととなるが、前回半期の12.8%、昨年の受任率12.4%と比べ見劣りがする。受任率においても、壁に直面していると言えようか。
 1~6月の半期の受任件数合計は162件であり、昨年比微増にとどまっている。4 外国人、少年
 要通訳事件の今四半期の合計件数は61件で、前年同期の合計(71件)に比べ、減少した。要通訳事件の事件数は全国4位であり、全国的にみて多い件数であることにはかわりはないが、受付件数に比較して減少幅が大きい。
 少年事件の今四半期の合計件数は52件であり、受付件数比7.3%である。これは、昨年の一年間の少年事件の比率(9.6%)や前回半期(8.9%)と比べても減少している。
5 千葉県警のホームページによれば、平成17年5月末までの本年の刑法犯の状況は、認知件数、検挙件数とも前年比大幅減である(もっとも、検挙人数は大幅に増加しているのであるが、これは同一人が複数犯罪を犯している場合に延べ人数でカウントしているからと思われる)。これからすれば、当会当番弁護士の受付件数の減少は、検挙件数の減少に帰因するものということになる。もっとも、景気動向次第では犯罪件数が増えるとは十分予想できるもので、今のうちに当会においてきたるべき制度を検討し、将来の負担に耐えられる制度を構築すべきである。
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by lodaichi | 2005-07-15 20:59 | 当番弁護士