3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

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(注) 下記文章は、千葉県弁護士会の会報に当初載せたものである。同文章中「当会」とは、千葉県弁護士会を意味する。

  
1 本稿は、日弁連より筆者が入手した2004年の全国の当番弁護士統計をもとに、当会の当番弁護士の現状を紹介するものである。
2 受付件数
 まず、当会の受付件数を経年的にみると、2001年が1,862件、2002年が2,258件、2003年が3,183件であり、一貫して右肩上がりであったが、2004年は2,863件と昨年比10%程度減少した。
  受付件数の上位会(2000件以上)
①東京三会 1万0359件    ⑤福岡   3557件 
②横浜     5503件    ⑥千葉   2863件
③名古屋    4624件    ⑦埼玉   2153件
④大阪     4180件
であり、当会は第6位である。上位5会の前年の受付件数を見ると、東京三会、大阪、福岡はほぼ前年並(前年比10%以内の増)であるが、横浜、名古屋、埼玉が20%以上の増である。
 全国的にみても、前年比減となった会は当会を含めて9会しかなく、受付件数の減少は全国的なトレンドとはいえない。横浜、埼玉が20%以上の増加を記録していることからみても、当会も再び増加する可能性は十分にあると見なければならないだろう。
3 受任件数
 ここ数年の当会の受任件数は、2001年が97件、2002年が142件、2003年が241件であり、2004年は311件と一貫して受任件数を伸ばしている。
 受付件数が減少したことから、2004年の受任率は、12.4%と前年(8.4%)よりも大幅に改善した。
 受任件数の全国の上位(300件以上)は、
①東京 3857件    ⑤京都  497件
②大阪 1125件    ⑥名古屋 494件
③福岡  890件    ⑦札幌  439件
④横浜  840件    ⑧千葉  311件
である。当会とほぼ同規模(会員数300人台)の京都、札幌には残念ながらいまだ及ばないが、埼玉(192件)をはるかに超える受任件数を記録していることは当会の刑事弁護の一大成果といえる。
4 要通訳事件
 2004年は287件であり、2003年の321件に比べ、大幅な減少とはなっている。しかし、全国的にみれば、千葉は4位であり、大阪よりもその数は多い。
①東京 1664件    ④千葉  287件
②名古屋 972件    ⑤大阪  165件
③横浜  375件    
 埼玉が120件であることからすると、やはり成田空港をかかえた当会の特性が表れているというほかない。
 薬物の営利目的密輸事件は大麻を除いて全て2006年施行の被疑者国選事件の対象事件となるから、通訳の確保は喫緊の課題である。
5 少年
 少年事件は274件であり、受付件数の9.6%である。これは全国平均(11.4%)よりも低いし、横浜(16.1%)、埼玉(14.4%)よりも低い。もっとも東京(8.8%)よりは高いので、千葉県内で勾留されている少年が当番を他県よりも呼んでいないのかどうかについては、これだけでは何ともいえない。
 少年付添扶助件数は67件を記録しており、受付件数比約25%である。子どもの権利委員会の積極的な施策の効果であろうか。
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by lodaichi | 2005-06-16 10:48 | 当番弁護士
(注) 下記文章は、千葉県弁護士会の会報に当初載せたものである。同文章中「当会」とは、千葉県弁護士会を意味する。


1 弁護士会事務局においては日弁連へ報告する「当番弁護士制度運用状況報告書」の2005年1月分から3月分をもとに当番弁護士制度の現状について報告する。
2 受付件数
 2005年1月~3月の当番弁護士の受付件数は以下のとおりである(括弧内は前年同月の受付件数)。
  1月  179件(272)
  2月  217件(278)
  3月  222件(258) 
   計  618件(808)
 1月~3月の合計受付件数は前年比約76.4%であり、実に24.6%の大幅な減少である。
 ここ1年の四半期毎の件数をみると、
2004年4月~6月    741件
 同 年 7月~9月    647件
 同 年 10月~12月  667件
であるから、やはり一貫して減少しているといえる。
 この減少が、単に全体の事件数の減少にのみ帰因しているのであればよいが、そうでないのであれば、当番弁護の受付をこなしていくだけでは来たるべき被疑者国選には耐えられないといえよう。
3 受任件数
 受任件数は以下のとおりである(括弧内は前年同月の受任件数)。
  1月  30件(32)
  2月  25件(19)
  3月  24件(18) 
   計  79件(69)
 1月~3月の合計受任件数は、前年比1.14倍であり、受付件数は減少しているのに受任件数については増加していることは注目されるべきである。
 受任率(受任件数/受付件数)でみると、今四半期のそれは12.8%ととなり、前年の年平均(12.4%)よりも若干高い。
 昨年の千葉の受任件数は311件と全国8位である。会員数が当会と近い札幌が全国7位で439件であることから、目標は札幌ということになるが、その差は未だ大きい。来たるべき被疑者国選への対応能力を養うという意味からも受任件数の増大には意を用いるべきである。
 受任件数増大の為には、新入会員を中心とした若手への教育を中心に行い、自ら進んで受任できる人材を生み出す必要があろう。また、特別会費がサラ金相談と比べて刑事が割高であるのが現状であり、これを改変することで政策的に受任を促すことができるのではないかと考える。
4 外国人、少年
 要通訳事件の今四半期の合計件数は51件で、前年同期の合計(83件)に比べて、61.4%であり、落ち着きをみせている。
 少年事件の今四半期の合計件数は60件であり、受付件数の9.7%を占めており、昨年の一年間の少年事件の比率(9.6%)とほぼ同様であるが、2003年の少年事件の比率(11%)と比べると1%以上減少となっている。
5 当番弁護士制度運用状況報告書は日弁連所定の書式である。罪名ついては、刑法犯と特別法犯に分けて記載することになっているが、2006年11月までに施行される被疑者国選の範囲(短期1年以上の刑にあたる罪)か否かの区分はない。よって、この運用状況報告書からは、被疑者国選相当の事件が何件当番できているかが把握できない。当番弁護の報告書を改訂することで、この点への対応が必要となろう。
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by lodaichi | 2005-06-16 10:43 | 当番弁護士

文献メモ


準抗告審の判断資料、裁判
・「準抗告審の判断資料、裁判」(判例タイムズ1179号p85)
 準抗告審の構造として基本的に事後審説をとりながら、原裁判後の資料についても一定の範囲で準抗告審の資料とすることができるとする説に立っており、実務に携わっている裁判官の感覚を知る上で参考になる。

量刑
 ・ 「平成16年刑法改正と量刑実務の今後の動向について」
         判例タイムズ1173号p4~p22
平成16年刑法改正による法定刑の改正についての実務への影響を説いたものとして
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by lodaichi | 2005-06-15 21:04

覚せい剤の持込事案

覚せい剤の持ち込み事案
 例えば、被疑者が、A国でBから、「50万円の報酬をやるから、このキャリーバッグを持っていってくれ」と依頼されて、キャリーバッグを持って日本に入国しようとしたところ、税関の検査でキャリーバッグ内には覚せい剤数キログラムが入っていたことが発覚し逮捕されるような事案。

1 成立犯罪
 覚せい剤取締法違反(営利目的密輸罪)
 関税法違反(禁制品輸入罪)
 両者の関係は観念的競合(最判昭和58年9月29日刑集37・7・110)

 覚せい剤密輸罪は、本件の事例では覚せい剤密輸罪は既遂に達している.
 関税法の無許可営業罪は、本件の事例では未遂である.
 もっとも、未遂減軽の規定が関税法上は排除されているため、関税法違反の点については量刑上未遂を論じる意味は高くない.

2 犯罪の成否について問題となりやすいもの-故意
 持込を行う被疑者は、キャリーバッグの中に何がはいているのか明確にはわからないまま日本に持ち込もうとするので、「中身について何が入っているのか知らなかった」という主張が散見される.
 そこで、どこまでの認識があれば覚せい剤の営利目的密輸罪の故意があるといえるのかが問題となる.
 判例では
「本件物件を密輸入して所持した際、覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識」=「覚せい剤かもしれないし」その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識」
があればよい(最判平成2年2月9日判時1341・157)。
 なお、関税法違反の禁制品輸入罪の故意については、「税関を通らない物を持ってはいる」という認識があれば故意ありといえるので、覚せい剤の営利目的密輸罪の故意とは別に考えるべきである.
 
3 量刑
 営利目的の密輸罪であるから実刑は必至である。
 量刑上の考慮要素のポイントは、覚せい剤の量、認識の程度(確定的故意か未必的故意か)、密輸に果たした役割(単なる運び役に過ぎないのか、それ以上の役割を果たしているか)、動機等が重要なところとなろうか.
 検察官は、被疑者が誰から物件の受け渡しをされたのかについて、その名前を出しているか等の事案の解明にどれだけ貢献したかを考慮して求刑を決めているものと思われるが、裁判官がこの点をどれだけ考慮して量刑をしているのかは不明である(判決中の量刑の理由でもこの点について触れないため)。
 事件について、自白しているか否認しているかで量刑が左右されるかは、裁判官によるのではないか
 
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by lodaichi | 2005-06-14 10:49