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3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

公判前整理手続相当事件に対する千葉県弁護士会の対応について

1 公判前整理手続とは、第1回公判期日前に受訴裁判所が主宰して、公判において当事者が主張する予定の事実を明示させ、証拠調べの請求をさせ、また、証拠開示もより徹底して行わせる等により十分な審理計画を策定するというものである(田口守一;刑事訴訟法)。
 この手続は、今般の刑事訴訟法改正において新設され、2005年11月1日から施行される。
2 千葉県弁護士会(以下、「当会」という)においては一部支部を除き国選事件における弁護人の推薦を裁判所に対して行っているが、この推薦制度は、基本的には期日をあらかじめ割り当てる割り当て制を採用している。
 しかし、公判前整理手続においては、第1回公判前において整理手続が行われるため、期日が未指定のまま裁判所から弁護士会に対して、推薦依頼が行われることとなる。よって、従来のシステムとは異なる枠組みを用意する必要がある。
 また、同手続は、通常の準備手続に比べて、公判準備の程度を格段に強化した手続である(前掲書)から、この事件に対応するには、制度が周知・徹底されていない現段階においては、それ相応の意欲と能力を伴った弁護士において担われることが望ましい。
 公判前整理手続に付される事件は、裁判所・検察庁との協議において、「裁判員対象事件か否かを問わず、実質的に争点及び証拠の整理が必要な事件に限定する(年間数十件程度と思われる)」とされており、著しい数の事件数をこなさなければならないわけではない。
 刑弁センターには、公的弁護人の推薦順序を変更する権限が認められている(国費による弁護人の推薦等公的弁護運営規則4条但書)ので、この規定に基づき、同センターとして公判前整理手続に付される事件については、希望者による名簿に基づいて推薦を行うことを、本年7月の委員会において決議した。
 同決議に基づき、希望者を募ったところ、30名あまりの希望者を得たので、これを名簿に登載した。
 今後、期日未指定で裁判所から公判前整理手続相当事件であるとして国選弁護人推薦が行われた場合は、この名簿に基づいて推薦が行われることとなる。
3 同名簿の扱いについて、留意していただきたい点は以下のとおりである。
 1) 同名簿が適用されるのは、基本的には本庁の事件である。
 合議が行われる支部においては、弁護士会支部の立場を尊重するので、弁護士会支部において、各裁判所支部と協議の上、取り扱いを決していただければよい。もっとも、弁護士会支部の中には、状況しだいでは、弁護士会支部のみでは対応できかねるという場合もあろうから、この場合は、弁護士会支部の要請があれば、同名簿を利用して支部事件に適用することもありうる。
 2)同名簿は、起訴前段階では弁護人が選任されていない事件についてのみ適用される。
 起訴前から弁護人が選任されている時は、その弁護人が起訴後も弁護人となるのが通常であろうから、事件が公判前整理手続に付される場合は、その弁護人が担当するのがもっとも迅速かつ的確な対応をすることが可能である。
 よって、同名簿に登載されていないからといって、公判前整理手続をまぬかれるものではない。これは、同名簿が私選弁護人が選任されている場合に適用がないことから当然導かれることである。
 刑事被疑者援助制度(刑事扶助)から国選事件に切り替えが行われる場合は、私選弁護人が選任されているときと同様であるから、同名簿の適用はない。つまり、刑事扶助で選任されている弁護人が引き続き公判前整理手続を行うこととなる。
 現在、当番弁護士制度の中で委員会派遣制度があるが、これによって派遣される事件は重大事件であるから、公判前整理手続に付される可能性が類型的に見て高い(もっとも、制度発足当初は、単なる自白事件では公判前整理手続に付されない可能性が高いと思われるが)ので、注意が必要である。
 繰り返しになるが、今回の名簿はあくまで弁護人が起訴前段階では選任されておらず、裁判所から期日未指定で公判前整理手続相当の事件を処理するためのものである。この名簿に登載されていないからといって、公判前整理手続をいかなる場合でもまぬかれるものではない。
 3) 同名簿は、司法支援センターが国選業務を開始する2006年10月1日までのものである。
 弁護士会が、国選弁護人の推薦業務を担当するのは、2006年9月30日までであるから、必然的に同名簿の効力もそれまでとなる。
 4) 同名簿によって具体的に公判前整理手続事件を配点するに当たっては、日弁連又は当会の主催した研修会を受講することを前提条件としている。
 これは同手続が従来にないものであり、主張や証拠請求を行っておかないと、失権効があり、重大な不利益を被告人にもたらしかねないため、その点を配慮してのものである。多忙であって研修会に参加できないという方は、日弁連のホームページ(会員向け)から、過去に行われた日弁連主催の研修会をインターネットで受講することが可能であるので、これを聴講すれば受講した扱いを受けることができる。
4 公判前整理手続は、裁判員制度が施行されれば、同制度対象事件については必要的と定められており、今後多くの弁護士が同制度に習熟することが求められる。当会の対応体制と共に、同制度の理解を深めていただきたいと切に願う次第である。
by lodaichi | 2005-10-23 14:55