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3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

在宅事件において略式罰金がでるときの依頼者へのアドバイス

以前、
在宅事件における略式罰金の手続という記事を書いたが、
 
1 初犯の酒気帯び運転罪で罰金というようなケースと
2 自動車運転過失傷害・自動車運転過失致死
のようなケースでは処理の方式が異なるというようなことを概略的に説明しただけで終わってしまっていた。

 今回は、自動車運転過失致死のようなケースで、依頼者にどのような説明をしていくか、弁護人としてはどのように考えていくかということを考えてみたい。

まず、流れを押さえておく
ア 検察官は所定の捜査が終わった時点で被疑者の同意をとって略式起訴
イ 裁判所もそれを審理してから略式命令を出す(起訴当日にはでない)
ウ 略式命令は被疑者(この時点では被告人だが)に送達される

この手続きを検察官は、被疑者に対してきちんと説明していない。
ある被疑者に検察官がいったのは、
「君を略式罰金にすることとしたから、この同意書に署名押印しなさい。
振り込み用紙が届くことになるから、それを払いなさい」
だけであったという。

これでは、裁判官がなにをするのかという説明が一切ない(ひどい説明だ!)。

自動車運転過失致死だと現在は刑がかなり厳しくなっているので、略式罰金と聞いた瞬間に弁護人としては、ああこれでもう自分の仕事が終わったと思いがちだが、まだまだ仕事は残っている。

まず、裁判所が略式不相当というかもしれない(まあ、あまりないが)から、そのことを場合によっては説明する。

刑訴法
第463条1項
 前条の請求があつた場合において、その事件が略式命令をすることができないものであり、又はこれをすることが相当でないものであると思料するときは、通常の規定に従い、審判をしなければならない。

次に、ここは大切なところであるが、裁判所から略式命令が送られてきても、それに異議申し立て(正式裁判請求)はできるのだ、弁護士としては、記録をコピーして検討するからねということを説明しておく。

正式裁判請求についての条文は次のとおり

第四百六十五条  略式命令を受けた者又は検察官は、その告知を受けた日から十四日以内に正式裁判の請求をすることができる。
○2  正式裁判の請求は、略式命令をした裁判所に、書面でこれをしなければならない。正式裁判の請求があつたときは、裁判所は、速やかにその旨を検察官又は略式命令を受けた者に通知しなければならない。
第四百六十六条  正式裁判の請求は、第一審の判決があるまでこれを取り下げることができる。

このように正式裁判請求というのは重要なのだから、略式命令が送られてきたらそのことを弁護人に必ず通知してください、また、できたファクスしてくださいということも伝えておかなければならない。

略式命令に対する正式裁判請求が、捜査段階の弁護人でもできるかどうかについて疑問があるとするものに
奥村徹弁護士の見解
がある。
by lodaichi | 2009-12-25 21:16