公訴事実をしっかりチェック
2009年 11月 24日
弁護人の心構え
と題し、
弁護人が、公訴事実の有無を認定できるか否か検討するについては、自分が起訴検事になったつもりで考えるべきだ。
ということを述べたが、少し具体的に述べてみる。
例えば、酒気帯び運転の公訴事実はこんな風に書かれている。
「被告人は,酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で,平成*年8月31日午前1時32分ころ,千葉県*市a町b番地付近道路において,普通貨物自動車を運転したものである。」
弁護人は、被告人が「公訴事実は争いません」と接見で聞いただけで、安心してしまい、争うことを忘れてしまうなんてことは絶対にしてはならない。
いろいろなアプローチの仕方はあると思うが、公訴事実に述べられた順に考えていくのもひとつの方法である。
まず、「呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態」というが、これはどの証拠から認められるのか?
という疑問を発する。
普通は、酒気帯び鑑識カード及び検知の結果だろう。
でも、実は、酒気帯び検知をしたオリジナルの証拠は請求されていないことが多い(少なくとも、千葉の現状では;私が弁護士なりたての頃は検知のオリジナル証拠=検知管が証拠請求されていた)。
それを見なくて、警察・検察を信じてしまっていいのか?
証拠上、0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態であったとしても、その証拠収集方法に問題は無かったのか?
例えば、口をゆすがせていたのか(証拠上は、口をゆすがせたと書いてあったとしても、本当にゆすがせたのか、わからない)
次に、日時
先ほどの公訴事実だと、「平成*年8月31日午前1時32分ころ,千葉県*市a町b番地付近道路において」となっているが、これは正しいのか?
警察が検問をやっていて、ひっかかったケースであれば、この辺は問題ない。
ところが、物損をやって、あとで警察を呼ばれて検挙されたというようなケースでは、警察官が日時場所を明確に認識しているわけではないので、どうやってそれらを特定したのかという問題が生じる。
公訴事実に書かれた日時はいつの時点のものなのか、場所はどこをどうやって特定したのか、こういうことを考えていくと、意外と証拠があいまいだったり、逆にしっかり証拠のどこかに書いてあるのを探し出す事ができるものだ。
つまりは、捜査を追体験するということだ。
捜査を追体験し、それにチェックを入れる。
これが弁護人の役割である。