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3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

私選弁護人紹介制度と被疑者国選

千葉県弁護士会では、全国的に例をみないと思われるが、当番弁護士制度を廃止してしまって、私選弁護人紹介制度のみを運用している(→過去記事)。

私選弁護人紹介制度
 この制度は、あなたやあなたのご家族が刑事事件の被疑者・被告人となり私選弁護人の選任を希望する場合、弁護士会が弁護人を紹介するというものです。実際に弁護人として選任するか否かは、紹介された弁護士(弁護人候補者)と話し合った上で決めることになります。

これは、千葉県弁護士会のHPに書かれているものであり、制度そのものの説明としては正しいのであるが、実際にこの制度で被疑者と接見する場合は、被疑者国選との関係を意識しておく必要がある。

 資力基準(50万円)を超える資産を有する被疑者は、直ちには被疑者国選の請求ができず、私選弁護人紹介の申し出をしなければならない(刑訴法36条の3第1項)。

 紹介を受けた弁護士は、受任を拒むことができるが(31条の2第2項参照)、拒んだ場合、弁護士会は速やかに裁判所にその旨を通知しなければならない(同第2項)。

 つまり、私選弁護人の受任拒絶により、被疑者は国選弁護人をつけてもらえることになるのである。

 この点について、わかっていない弁護士がいるようだが、これは明らかに弁護士の力量不足であり、被疑者に手続を適切に説明していないものとして、懲戒ものである

 被疑者国選が制度としてあるにもかかわらず、被疑者の請求によることから、被疑者国選がついていないケースも散見されるが、上記のような弁護側の誤解により、被疑者の権利行使を妨げてはならない。

参考条文
第三十六条の三 この法律により弁護人を要する場合を除いて、その資力が基準額(標準的な必要生計費を勘案して一般に弁護人の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)以上である被告人が第三十六条の請求をするには、あらかじめ、その請求をする裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に第三十一条の二第一項の申出をしていなければならない。
2 前項の規定により第三十一条の二第一項の申出を受けた弁護士会は、同条第三項の規定による通知をしたときは、前項の地方裁判所又は当該被告事件が係属する裁判所に対し、その旨を通知しなければならない。

第三十一条の二 弁護人を選任しようとする被告人又は被疑者は、弁護士会に対し、弁護人の選任の申出をすることができる。
2 弁護士会は、前項の申出を受けた場合は、速やかに、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければならない。
3 弁護士会は、前項の弁護人となろうとする者がないときは、当該申出をした者に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。同項の規定により紹介した弁護士が被告人又は被疑者がした弁護人の選任の申込みを拒んだときも、同様とする。
by lodaichi | 2009-10-22 06:40