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3年目くらいまでの弁護士向け実務刑事弁護の覚書


by lodaichi

弁護人と示談交渉

 被害者のある事件で弁護人として示談交渉をどのようにするかということは、新人弁護士がもっとも不安に思うことのひとつなのではないかと思う。

 これは、
  被害者が弁護人をどのような目でみるのか
  どういうスタンスで自分は被害者の方と向き合ったらよいのか
ということが、経験のない弁護士ほどわからないからである。

 犯罪被害もそれぞれであり、被害者の思いもそれぞれであるから、マニュアルはない。

 ただ、あくまで弁護人は、加害者とは別人であるし、被害者も弁護士という立場をある程度はわかってくれていることは念頭においてよい。

 被害者が弁護人との面会を承諾する場合、「弁護士さんが話したいというなら話を聞いてみてあげても良いかな」という程度の思いは持っているはずである(そうでなければ、面会すら承諾しないだろう)

 この被害者の思いを、会ったときにうまくくみ取って、被害者の思いと被疑者・被告人の利益をマッチングさせることができるかどうか、これが弁護士にもとめられることだと思う。

 そういう意味で、
  自分がこの事件で被害者なら、どのように加害者側の弁護人に話をされたいか
ということを考えれば、被害者との糸口は見出せるはずである(もっとも、そのシミュレーションも外れることがしばしばであるが)。

 弁護人が謝るかどうかという問題があるが、私なら謝らない。
 弁護人は、加害者本人ではないからだ。

 それよりも、被害者の巻き込まれてしまった状況(本件犯罪行為及びそれ以後の手続き)を気遣う方がよい。

 例えば、「私の聞いているところでは、全治2週間の怪我を負われたということですが、お怪我の具合はどうですか?」
という具合に。
 例えば、「いろいろ警察から連絡があって、警察にも何度か足を運ばれたのではないですか。」
とか。

 そこに不満があれば、被害者はそのことを話してくれるし、そうでなければ、「いやそれは別に・・・」というような反応をするだろう。

 つまりは、被害者が何に関心を持っているのか、弁護士に会うといってくれたからには、何らかの話を聞こうとはしているわけで、そこから話をしていけばいいということである。

 示談をするには、お金の話は不可欠だが、日本人というのは、お金の話にいきなり入るのをいやがる人が多い(例外はある;「お金だけ返してくれればいいですよ」という人もいる)

 だから、お金の話は最後の方にするのが基本であろう。
 ケースによっては1回目の話ではお金の話しすらできないこともある。
by lodaichi | 2009-06-15 11:08